酔古堂剣掃 / 集奇・湖山の佳は清曉の春時
湖山之佳,無如清曉春時。當乘月至館,景生殘夜,水映岑樓,而翠黛臨階,吹流衣袂,鶯聲鳥韻,催起哄然。披衣步林中,則曙光薄戶,明霞射几,輕風微散,海旭乍來。見沿堤春草霏霏,明媚如織,遠岫朗潤出林,長江浩渺無涯,嵐光晴氣,舒展不一,大是奇絕。
新字:湖山之佳,無如清暁春時。当乗月至館,景生残夜,水映岑楼,而翠黛臨階,吹流衣袂,鶯声鳥韻,催起哄然。披衣歩林中,則曙光薄戸,明霞射几,軽風微散,海旭乍来。見沿堤春草霏霏,明媚如織,遠岫朗潤出林,長江浩渺無涯,嵐光晴気,舒展不一,大是奇絶。
書き下し
湖山の佳は、清曉の春時に如くは無し。當に月に乘じて館に至るべし、景は殘夜に生じ、水は岑樓に映じ、而して翠黛階に臨み、吹きて衣袂に流れ、鶯聲鳥韻、催し起こして哄然たり。衣を披て林中に步めば、則ち曙光戶に薄り、明霞几を射、輕風微かに散じ、海旭乍ち來たる。沿堤の春草の霏霏として、明媚なること織るが如く、遠岫朗潤として林を出で、長江浩渺として涯無く、嵐光晴氣、舒展一ならざるを見る、大いに是れ奇絕なり。
現代語訳
湖と山の美しさは、清らかな春の夜明けに及ぶものはありません。月明かりに乗じて宿に着くのがよいでしょう。景色は明け方近くの夜に生まれ、水は高い楼を映し、緑の山並みがきざはしに迫り、風が吹いて袖に流れ込み、鶯や鳥のさえずりがにぎやかに人を起こします。衣を羽織って林の中を歩けば、曙の光が戸口に迫り、明るい朝焼けが机を照らし、そよ風がかすかに散って、海から朝日がたちまち昇ってきます。堤に沿った春草が細やかに生い茂り、織物のように明るく美しく、遠くの峰はつややかに林の上に姿を現し、長江ははてしなく広がり、山の霞の光や晴れた空気がさまざまに広がっていくのが見えます。まことに比べるもののないすばらしさです。
解説
春の夜明けの湖山の美しさを、時の流れに沿って描いた小品文です。月夜に宿に着き、明け方の水面に楼が映り、翠黛、つまり眉墨のような緑の山並みが迫り、鳥の声に起こされて林を歩くと、曙光、朝焼け、朝日と、光が刻々と移り変わっていきます。霏霏は草が細やかに茂るさま、朗潤は明るくつややかなさま、浩渺は水が果てしなく広がるさまです。嵐光は山にかかる霞の光を言います。明末には、こうした山水の小品文が盛んに書かれ、筆者もその美しさを奇絶と呼んで称えています。夜明けの景色は、早起きした人だけが味わえる贈り物です。たまには早起きして、光の移ろいを見届けたいものです。
この章句が説くこと
山水自然春夜明け風雅
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