酔古堂剣掃 / 集奇・客と為れば則ち洪蒙も主人無し
作夢則天地亦不醒,何論文章;為客則洪蒙無主人,何有章句?
書き下し
夢を作せば則ち天地も亦た醒めず、何ぞ文章を論ぜん。客と為れば則ち洪蒙も主人無し、何ぞ章句有らん。
現代語訳
夢を見ているのであれば、天地もまた目覚めてはいないのですから、どうして文章を論じる必要がありましょう。旅人であるならば、この混沌とした宇宙にも主人はいないのですから、どうして文章の一句一句にこだわる必要がありましょう。
解説
人生は夢であり旅であると見て、文章へのこだわりを笑う一則です。唐の李白は「春夜桃李園に宴するの序」で、天地は万物の宿屋であり、時は百代の旅人であって、はかない人生は夢のようだ、と述べています。この句はそうした見方を踏まえたものでしょう。洪蒙は鴻濛とも書き、天地が分かれる前の混沌とした宇宙の元気を言います。天地そのものが夢の中にあり、宇宙に主人さえいないのなら、人の書く文章の出来や章句の細かい技巧など、取るに足りないというのです。細部にこだわるあまり大局を見失っていないか、ときには一歩引いて自分の悩みを眺めてみたいものです。
この章句が説くこと
達観夢幻文章人生無常
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