酔古堂剣掃 / 集奇・夢中の蕉鹿も猶ほ真のごとし
相禪遐思唐虞,戰爭大笑楚漢,夢中蕉鹿猶真,覺後蒓鱸一幻。
新字:相禅遐思唐虞,戦争大笑楚漢,夢中蕉鹿猶真,覚後蒓鱸一幻。
書き下し
相禪しては遐かに唐虞を思ひ、戰爭しては大いに楚漢を笑ふ。夢中の蕉鹿も猶ほ真のごとく、覺めて後の蒓鱸も一幻なり。
現代語訳
位を譲り合うことについては、はるかに唐虞(堯と舜)の時代を思い、戦いについては、楚と漢の争いを大いに笑います。夢の中で芭蕉の葉に隠した鹿もなお本物のようであり、目覚めたあとの蓴菜と鱸も一つの幻にすぎません。
解説
歴史も人生も夢幻のようだと見る、達観の一則です。唐虞は堯と舜のことで、二人は天子の位を徳ある者に譲る禅譲を行いました。楚漢は項羽の楚と劉邦の漢の天下争いです。平和な譲位も激しい争いも、遠くから眺めれば同じく過ぎ去ったことだというのです。蕉鹿は『列子』の話で、鄭の人が仕留めた鹿を芭蕉の葉で隠したが、場所を忘れて夢だったと思い込んだという故事です。蒓鱸は、晋の張翰が秋風に故郷の蓴菜の吸い物と鱸のなますを思い出し、官を辞して帰ったという故事です。夢も現も、執着するほどのものではないと知れば、目の前の損得に振り回されずにすむでしょう。
この章句が説くこと
達観夢幻歴史無常隠逸
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