酔古堂剣掃 / 集景・茶煙飄りて鶴避く
夕陽林際,蕉葉墮地而鹿眠;點雪爐頭,茶煙飄而鶴避。
新字:夕陽林際,蕉葉堕地而鹿眠;点雪炉頭,茶煙飄而鶴避。
書き下し
夕陽の林際、蕉葉地に墮ちて鹿眠り、點雪の爐頭、茶煙飄りて鶴避く。
現代語訳
夕日の差す林のほとりでは、芭蕉の葉が地に落ちて、その下で鹿が眠っています。一ひらの雪が舞い込む炉端では、茶を煮る煙がたなびいて、鶴がそれを避けています。
解説
夕暮れの林と冬の炉端を、鹿と鶴という仙境の動物で描いた対句です。蕉葉と鹿の組み合わせは、列子に見える蕉鹿の夢の故事、鄭の人が仕留めた鹿を芭蕉の葉で隠したが、場所を忘れて夢だったと思い込んだ話を思わせます。夢と現実の境があいまいな、夕暮れのまどろむ空気が感じられます。後の句の點雪の爐頭は、禅でいう紅炉一点の雪、真っ赤な炉に落ちた一片の雪がたちまち消えるという言葉を連想させます。鶴が茶の煙を避けるという描写には、ほのかなユーモアがあります。鹿も鶴も長寿や隠逸の象徴で、この則全体が仙境のような静けさに包まれています。
この章句が説くこと
自然隠逸風雅茶禅
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