酔古堂剣掃 / 集醒・得失は夢中の蕉鹿
憂疑,杯底弓蛇,雙眉且展;得失,夢中蕉鹿,兩腳空忙。
新字:憂疑,杯底弓蛇,双眉且展;得失,夢中蕉鹿,両脚空忙。
書き下し
憂疑は、杯底の弓蛇、雙眉且く展べよ。得失は、夢中の蕉鹿、兩腳空しく忙し。
現代語訳
憂いや疑いは、杯の底に映った弓の影を蛇と思い込むようなものです。しかめた眉をしばらく開きなさい。得や失は、夢の中で芭蕉の葉に隠した鹿のようなものです。両足でむなしく走り回っているだけです。
解説
憂いと得失へのとらわれを、二つの故事で笑い飛ばした対句です。杯弓蛇影は、壁にかけた弓が杯に映ったのを蛇と思い込み、病気になった人の話で、疑心暗鬼のたとえです。蕉鹿は『列子』に見える話で、鹿を仕留めて芭蕉の葉で隠した人が、その場所を忘れて夢だったと思い込み、それを聞いた別の人が鹿を見つけるという、得失の夢のようなはかなさのたとえです。私たちの心配の多くは、実体のない影におびえているだけかもしれません。損得を追って走り回るのも、夢の中のことのようにはかないものです。眉間にしわを寄せて悩んでいるとき、それは本当に蛇なのか、弓の影ではないのかと問い直してみたいものです。
この章句が説くこと
憂慮得失疑心閑適処世
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