酔古堂剣掃 / 集奇・雲閑にして卻つて僧に類す
石怪常疑虎,雲閑卻類僧。
新字:石怪常疑虎,雲閑却類僧。
書き下し
石怪しくして常に虎かと疑ひ、雲閑にして卻つて僧に類す。
現代語訳
石は形が怪しげなので、いつも虎ではないかと疑ってしまい、雲はのんびりしているので、かえって僧に似ています。
解説
石と雲を、虎と僧に見立てた五言の対句です。前半は、漢の名将李広が、草むらの石を虎と思って矢を射たところ、矢が石に深く突き刺さったという故事を思わせます。奇怪な形の石は、見る者の心を驚かせ、虎の姿を連想させるのです。後半の雲は、ゆったりと空をただよい、何ものにもとらわれない姿が、雲水と呼ばれる行脚僧を思わせます。見る人の心が、石には猛々しさを、雲にはのどかさを見いだしているとも言えるでしょう。自然を何かに見立てる遊びは、ものを見る目を豊かにしてくれます。散歩の途中で見かける石や雲に、何かの姿を探してみるのも楽しいものです。
この章句が説くこと
見立て自然風雅閑適禅
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集奇・杖底唯だ雲囊中唯だ月雲氣恍として窗裏の岫に堆く、山を看るに絕勝す。泉聲疑ふらくは竹間の樽に瀉ぐかと、酒に對するに賢る。杖底唯だ雲、囊中唯だ月、關市の譏を勞せず。石笥に書を藏し、池塘に墨を洗ふ、豈に山澤の稅に供せんや。
-
『酔古堂剣掃』集奇・驟雨橫に飛ぶ浮雲回り度りて、月影を開きて彎環たり。 驟雨橫に飛びて、星精を挾みて搖動す。
-
『酔古堂剣掃』集韻・閑かに鶴の浴するを觀る煙蘿月を掛け、靜かに猿の啼くを聽き、瀑布虹を飛ばし、閑かに鶴の浴するを觀る。
-
『酔古堂剣掃』集韻・詩酒の間にも自ら禪趣有り雲衲の高僧、水に泛び山に登るは、或いは藉りて以て點綴す可し。如し必ず蓮座に法を說かば、則ち詩酒の間にも、自ら禪趣有り、敢へて苦行頭陀を學びて、以て死灰と作らず。
-
『酔古堂剣掃』集靈・字意隱として行間に躍る樹影床に橫たはり、詩思平らかに枕外を凌ぐ。 雲華紙に滿ち、字意隱として行間に躍る。
-
『酔古堂剣掃』集韻・空山に雨掛かる謝し將て縹緲として歸る處無く、斷浦に雲沈む。行きて紛紜として繫がれざる時に到れば、空山に雨掛かる。