酔古堂剣掃 / 集奇・其の響くや琴
瀑布天落,其噴也珠,其瀉也練,其響也琴。
書き下し
瀑布天より落つ、其の噴くや珠、其の瀉ぐや練、其の響くや琴。
現代語訳
滝が天から落ちてきます。その噴き出すしぶきは珠のよう、流れ落ちる姿は白い練り絹のよう、その響きは琴の音のようです。
解説
滝の姿を、しぶきと流れと響きの三つの面から描いた一則です。瀑布は滝のこと、天落は天から落ちてくるかのような高さを言います。噴き上がるしぶきは真珠のように輝き、瀉ぐ、つまり流れ落ちる水は、白く練った絹を垂らしたように見えます。練は、煮て柔らかく白くした絹のことです。そしてその響きは琴の音のようだというのです。目で見る輝きと形、耳で聞く音を、三つの短い比喩で鮮やかに描き分けています。李白の「廬山の瀑布を望む」のように、滝は古来、詩人たちが競って詠んだ題材でした。自然の姿を細やかに観察し、それを言葉にしてみると、景色の味わい方が一段と深くなるでしょう。
この章句が説くこと
山水自然比喩風雅観察
関連する章句
-
人物志・九徵猶ほ火日の外を照らして、內を見る能はず、金水の內に映じて、外に光る能はざるがごとし。
-
説苑・善說客梁王に謂いて曰く、「惠子の事を言うや譬を善くす。王をして譬うる無からしめば、則ち言うこと能わじ。」王曰く、「諾。」明日見えて惠子に謂いて曰く、「願わくは先生の事を言うは則ち直言せよ、譬うる無かれ。」惠子曰く、「今此こに人有りて彈を知らざるに、『彈の狀は何の若きか』と曰わば、應えて『彈の狀は彈の如し』と曰わば、諭らんか。」王曰く、「未だ諭らざるなり。」「是に於て更に應えて『彈の狀は弓の如くにして竹を以て弦と爲す』と曰わば、則ち知らんか。」王曰く、「知るべし。」惠子曰く、「夫れ說く者は固より其の知る所を以て、其の知らざる所を諭し、人をして之を知らしむ。今王『譬うる無かれ』と曰わば、則ち不可なり。」王曰く、「善し。」
-
戦国策・謂公叔曰乘舟公叔に謂いて曰く、「舟に乘るに、舟漏れて塞がざれば、則ち舟沈まん。漏舟を塞ぎて、陽侯の波を輕んずれば、則ち舟覆らん。今公自ら薛公に辯ずるを以て秦を輕んずるは、是れ漏舟を塞ぎて陽侯の波を輕んずるなり、願わくは公之を察せよ。」
-
『呻吟語』内篇・談道・玄言は道の以て為す無き者譬ふること罕にして喻る者は、至言なり。譬へて喻る者は、微言なり。譬へて喻らざる者は、玄言なり。玄言なる者は、道の以て為す無き者なり。玄言を理會せざるも、其の聖人爲るを害せず。
-
孫子・勢篇故に戦いを善くする者の勢は、円石を千仞の山より転ずるが如きなり。
-
『幽夢影』巻下・蛛は蝶の敵國蛛は蝶の敵國爲り、驢は馬の附庸爲り。