酔古堂剣掃 / 集奇・立言は亦た何ぞ容易ならん
立言亦何容易,必有包天包地、包千古、包來今之識;必有驚天驚地、驚千古、驚來今之才;必有破天破地、破千古、破來今之膽。
新字:立言亦何容易,必有包天包地、包千古、包来今之識;必有驚天驚地、驚千古、驚来今之才;必有破天破地、破千古、破来今之胆。
書き下し
言を立つるは亦た何ぞ容易ならん、必ず天を包み地を包み、千古を包み、來今を包むの識有り。必ず天を驚かし地を驚かし、千古を驚かし、來今を驚かすの才有り。必ず天を破り地を破り、千古を破り、來今を破るの膽有り。
現代語訳
後世に残る言葉を立てるのは、何とたやすくないことでしょう。必ず、天を包み地を包み、はるかな昔を包み、これからの未来を包むほどの見識が必要です。必ず、天を驚かし地を驚かし、はるかな昔を驚かし、これからの未来を驚かすほどの才能が必要です。必ず、天を破り地を破り、はるかな昔を破り、これからの未来を破るほどの胆力が必要です。
解説
後世に残る言葉を著すには、識と才と胆の三つが要ると説く一則です。立言は、『左伝』で徳を立てる立徳、功を立てる立功と並んで、三不朽、すなわち永遠に朽ちないものの一つとされる言葉です。包むは見識の広さ、驚かすは才能の非凡さ、破るは既成の枠を打ち破る胆力を表しています。天地、千古、来今と、空間と時間のすべてにわたる大きさを求める、壮大な言い方です。本当に人の心に残る言葉や作品は、知識の広さ、表現の力、そして常識を破る勇気がそろって初めて生まれるのでしょう。何かを発信するとき、自分にこの三つがそろっているか振り返ってみたいものです。
この章句が説くこと
立言見識才気胆力学問
関連する章句
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。