酔古堂剣掃 / 集奇・魄動き心驚く
世味非不濃艷,可以淡然處之。獨天下之偉人與奇物,幸一見之,自不覺魄動心驚。
新字:世味非不濃艶,可以淡然処之。独天下之偉人与奇物,幸一見之,自不覚魄動心驚。
書き下し
世味は濃艷ならざるに非ず、淡然として之に處す可し。獨り天下の偉人と奇物とは、幸ひに一たび之を見れば、自ら魄動き心驚くを覺えず。
現代語訳
世の中の味わいが濃く艶やかでないわけではありませんが、淡々とした気持ちでそれに向き合うことができます。ただ天下の偉人と珍しい物だけは、幸いにも一度それを目にすると、思わず魂が揺さぶられ心が驚くのを抑えられません。
解説
世俗の楽しみには淡々としていられても、偉人と奇物には心が動くと言う一則です。世味は世の中の味わい、名利や快楽のことで、濃艶はそれが濃く艶やかなことです。そうしたものには淡然、つまりあっさりと距離を置いて接することができるというのです。しかし、天下にまれな偉大な人物や、珍しくすぐれた物に出会ったときばかりは、魄、すなわち魂が動き、心が驚くのを自分でも止められないと言います。集奇という集の名にふさわしく、奇なるものへの感動がまっすぐに表れています。名利に動じない人でも、本物に出会えば素直に心を震わせる、その感性を失わずにいたいものです。
この章句が説くこと
感動奇物偉人淡泊心境
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