酔古堂剣掃 / 集奇・貨財を以て子孫を害す
以貨財害子孫,不必操戈入室;以學校殺後世,有如按劍伏兵。
新字:以貨財害子孫,不必操戈入室;以学校殺後世,有如按剣伏兵。
書き下し
貨財を以て子孫を害するは、必ずしも戈を操りて室に入らず。學校を以て後世を殺すは、劍を按じ兵を伏するが如き有り。
現代語訳
財産によって子孫を損なうのは、何も武器を手に家に押し入るまでもありません。学校によって後の世代を殺すのは、剣に手をかけて伏兵を潜ませておくようなものです。
解説
財産と教育が、かえって子孫や後世を損なうことを警告した対句です。財産を多く残せば、子孫は怠け、争い、身を持ち崩すことがあります。それは刃物を持って家に押し入るまでもなく、確実に子孫を害することになるというのです。学校はここでは学問を教える場、ひいては学問の在り方そのものを指しています。形ばかりの誤った学問を教えれば、それは伏兵のように、気づかぬうちに後の世代の心を殺してしまうのです。子に何を残すか、次の世代に何を教えるかは、慎重に考えなければなりません。お金や知識を与えることよりも、自ら考え、自ら立つ力を育てることこそ大切なのでしょう。
この章句が説くこと
家訓教育財産子孫学問
関連する章句
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。