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酔古堂剣掃 / 集景・高猿長嘯し屬引淒異なり

孤帆落照中,見青山映帶,征鴻回渚,爭棲競啄,宿水鳴雲,聲淒夜月,秋飆蕭瑟,聽之黯然,遂使一夜西風,寒生露白。萬山深處,一泓澗水,四周削壁,石磴嶄巖,叢木蓊郁,老猿穴其中,古松屈曲,高拂雲顛,鶴來時棲其頂。每晴初霜旦,林寒澗肅,高猿長嘯,屬引淒異,風聲鶴唳,隙嚦驚霜,聞之令人淒絕。

新字:孤帆落照中,見青山映帯,征鴻回渚,争棲競啄,宿水鳴雲,声淒夜月,秋飆蕭瑟,聴之黯然,遂使一夜西風,寒生露白。万山深処,一泓澗水,四周削壁,石磴嶄巖,叢木蓊郁,老猿穴其中,古松屈曲,高払雲顛,鶴来時棲其頂。毎晴初霜旦,林寒澗粛,高猿長嘯,属引淒異,風声鶴唳,隙嚦驚霜,聞之令人淒絶。

書き下し

孤帆落照の中、青山の映帶し、征鴻渚に回り、爭ひ棲み競ひ啄み、水に宿り雲に鳴き、聲夜月に淒しく、秋飆蕭瑟たるを見る、之を聽けば黯然として、遂に一夜の西風をして、寒生じ露白からしむ。 萬山の深き處、一泓の澗水、四周は削壁、石磴嶄巖、叢木蓊郁たり、老猿其の中に穴し、古松屈曲して、高く雲顛を拂ひ、鶴來りて時に其の頂に棲む。 每に晴初霜旦、林寒く澗肅かに、高猿長嘯し、屬引淒異にして、風聲鶴唳、隙嚦として霜に驚く、之を聞けば人をして淒絕せしむ。

現代語訳

夕日の中にぽつんと浮かぶ一つの帆から眺めると、青い山々が照り映えて連なり、渡り鳥の雁が中州に戻ってきて、先を争ってねぐらにつき、競ってついばみ、水辺に宿り雲間に鳴き、その声は夜の月の下でもの寂しく、秋の風がさびしく吹いています。それを聞くと心が暗く沈み、とうとう一夜の西風が、寒さを生み露を白く凍らせてしまいます。無数の山の奥深くに、ひとすじの谷川があり、四方は削り取ったような絶壁で、石段は険しくそびえ、木々はうっそうと茂っています。年老いた猿がその中に穴を作って住み、古い松は曲がりくねって、高く雲の頂を払い、鶴が来てときおりその梢に止まります。晴れはじめた霜の朝にはいつも、林は寒く谷は静まり返り、高い所の猿が長く叫び、その声は長く尾を引いてもの悲しく、風の音や鶴の鳴き声が、霜に驚いたように高く鋭く響きます。それを聞くと、人はこの上なくもの悲しい思いにさせられます。

解説

秋の水辺と深山の、もの悲しい音の風景を二つの場面で描いた一則です。前半は、夕日の中の舟から、雁の群れの鳴き声と秋風を聞く場面です。征鴻は遠くへ渡っていく雁、蕭瑟は秋風のさびしい音です。後半は、深い山の谷間で、猿と鶴の声を聞く場面です。每に晴初霜旦以下は、北魏の酈道元が水経注で長江の三峡を描いた名文、晴れはじめの霜の朝、林は寒く谷は静まり、高い猿が長く叫んで声が尾を引きもの悲しい、を踏まえています。風聲鶴唳は、敵の襲来におびえた兵が風の音や鶴の声にも驚いたという故事で知られる言葉です。悲しい音にも、心を深く揺さぶる美しさがあることを教えてくれます。

この章句が説くこと

自然山水名文哀愁

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