酔古堂剣掃 / 集韻・復た人世の興衰を問はず
溪畔輕風,沙汀印月,獨往閑行,嘗喜見漁家笑傲;松花釀酒,春水煎茶,甘心藏拙,不復問人世興衰。
新字:渓畔軽風,沙汀印月,独往閑行,嘗喜見漁家笑傲;松花醸酒,春水煎茶,甘心蔵拙,不復問人世興衰。
書き下し
溪畔の輕風、沙汀の印月、獨り往きて閑行し、嘗て漁家の笑傲するを見るを喜ぶ。松花にて酒を釀し、春水にて茶を煎じ、甘心して拙を藏し、復た人世の興衰を問はず。
現代語訳
谷川のほとりのそよ風、砂浜の水面に映る月、そこをひとりのんびりと歩いては、漁師たちが気ままに笑い合っているのを見るのをいつも喜んでいます。松の花で酒を醸し、春の水で茶を煎じ、進んで自分の不器用さを隠して、もう世の中の栄枯盛衰を問うこともありません。
解説
世の栄枯盛衰から離れた隠者の満足を描いた対句です。沙汀は水辺の砂浜、印月は水面に月が映ることです。笑傲は気ままに笑い、何ものにもおもねらないさまを言います。漁師の自由な暮らしを眺めるのが楽しみだというのです。松花酒は松の花粉を用いた酒で、隠者の飲み物とされました。蔵拙は自分のつたなさを表に出さないこと、甘心は自ら進んで、という意味です。世に出て才を競うより、つたなさを抱えたまま静かに暮らすことを選び、世の中の興衰にはもう関わらないというのです。すべてを追いかけなくてよいと決めることで、手に入る心の安らぎもあるのでしょう。
この章句が説くこと
隠逸閑適茶道知足自然
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