酔古堂剣掃 / 集韻・必ず先づ細かに味はひ沈吟す
蔡中郎傳,情思逶迤;北西廂記,興致流麗。學他描神寫景,必先細味沈吟,如曰寄趣本頭,空博風流種子。
新字:蔡中郎伝,情思逶迤;北西廂記,興致流麗。学他描神写景,必先細味沈吟,如曰寄趣本頭,空博風流種子。
書き下し
蔡中郎傳は、情思逶迤たり。北西廂記は、興致流麗たり。他の神を描き景を寫すを學ばんとせば、必ず先づ細かに味はひ沈吟すべし。如し本頭に趣を寄すと曰はば、空しく風流の種子を博するのみ。
現代語訳
『蔡中郎伝』(後漢の蔡邕を主人公とする戯曲)は、情のこまやかさがどこまでも続き、『北西廂記』(元代の恋愛劇)は、興趣が流れるように美しいものです。その心の描き方や情景の写し方を学ぼうとするなら、必ずまず細かく味わい、じっくりと口ずさまなければなりません。もしただ台本に興味を寄せているだけだと言うなら、いたずらに風流人の名を得るだけです。
解説
戯曲を読むにも精読が要ると説く一則です。蔡中郎伝は後漢の学者蔡邕、字は伯喈を主人公とする戯曲で、元末の『琵琶記』として知られる作品の系統です。北西廂記は元の王実甫の『西廂記』で、張生と崔鶯鶯の恋を描いた名作です。逶迤はうねうねと長く続くさま、流麗は流れるように美しいさまです。筆者は、こうした作品の人物描写や情景描写を学ぶには、細かく味わい、沈吟、すなわち声に出してじっくり口ずさむことが必要だと言います。本頭は台本のことで、上辺だけの愛好では風流を気取るだけに終わる、というのです。好きな作品ほど、急いで読み流さず、一語一語を味わってみたいものです。
この章句が説くこと
読書文学精読風雅学問
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