酔古堂剣掃 / 集韻・草色溪橋に遍し
草色遍溪橋,醉得蜻蜓春翅軟;花風通驛路,迷來蝴蝶曉魂香。
新字:草色遍渓橋,酔得蜻蜓春翅軟;花風通駅路,迷来蝴蝶暁魂香。
書き下し
草色溪橋に遍くして、蜻蜓を醉はしめ得て春翅軟らかなり。花風驛路に通じて、蝴蝶を迷はし來たりて曉魂香し。
現代語訳
草の緑が谷川の橋に一面に広がり、とんぼを酔わせて春の羽もやわらかくなります。花の香る風が宿場の道に吹き通い、蝶を迷わせて、夜明けの夢まで香しくなります。
解説
春の野の情景を、とんぼと蝶に託して詠んだ対句です。渓橋は谷川にかかる橋、駅路は宿場を結ぶ街道です。草の緑があまりにみずみずしいので、とんぼまで酔ったように羽をやわらかく休めています。花の香りを運ぶ風は街道を吹き抜け、蝶はその香りに迷い込み、夜明けの夢まで香りに染まるというのです。暁魂は明け方の夢うつつの魂を言い、荘子が蝶になった夢の話を思わせる言葉選びです。虫の姿を借りて、春にうっとりする人の心を描いています。季節の変わり目には、人も虫と同じように心が浮き立つものです。その気分を素直に楽しむのも一つの風雅でしょう。
この章句が説くこと
風雅季節自然春感性