酔古堂剣掃 / 集景・蒲根服すべし
松子為餐,蒲根可服。
書き下し
松子を餐と為し、蒲根服すべし。
現代語訳
松の実を食事とし、蒲の根を食べればよいのです。
解説
山林に住む隠者の食事を、わずか八字で表した一則です。松子は松の実、蒲根は蒲の根で、いずれも仙人や隠者が食べる粗末な食べ物として語られてきました。服すは、ここでは食べる、服用するという意味です。この句は集素に収められた、長林に枕して史を披き、松子を餐と為す、豐草に入りて以て閒を投じ、蒲根服すべし、という則の一部と同じで、ここでは景色を表す言葉として短く切り出されています。ぜいたくな食べ物を求めず、自然の中にあるもので腹を満たせば十分だという清貧の思想が、この八字に凝縮されています。食べるものを簡素にすることは、暮らし全体を身軽にする第一歩なのかもしれません。
この章句が説くこと
清貧隠逸簡素自然飲食
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・長林に枕して史を披く長林に枕して史を披き、松子を餐と為す。 豐草に入りて以て閒を投じ、蒲根服すべし。
-
『酔古堂剣掃』集韻・裘を披て穗を拾ふ草を借り荊を班きて、林泉の窔に安穩し、裘を披て穗を拾ひて、草澤の臞に逍遙す。
-
『酔古堂剣掃』集素・飢ゑて乃ち餐を加ふれば菜食も珍味より美し飢ゑて乃ち餐を加ふれば、菜食も珍味より美し。 倦みて然る後に睡れば、草蓐も重裀に勝るに似たり。
-
『酔古堂剣掃』集素・琴書を以て益友に代ふ茅屋三間、木榻一枕、高香を燒き、苦茗を啜り、數行の書を讀み、懶倦すれば便ち松梧の下に高臥し、或いは科頭にして行吟す。 日常苦茗を以て肉食に代へ、松石を以て珍奇に代へ、琴書を以て益友に代へ、著述を以て功業に代ふ、此れ亦た樂事なり。
-
『酔古堂剣掃』集韻・饑ゑて餐ふに如くは無し快欲の事は、饑ゑて餐ふに如くは無く、適情の時は、甘く寢ぬるに過ぐるは莫し。多きを清欲に求むれば、即ち侈汰も亦た茫然たり。
-
『酔古堂剣掃』集景・松子我が衣裾に落つ籬邊に杖履して僧を送れば、花須巾角に列なり、石上に壺觴して客を坐せしむれば、松子我が衣裾に落つ。