酔古堂剣掃 / 集景・桃源に入りて津を問ふ
出芝田而計畝,入桃源而問津。菊花兩岸,松聲一邱。葉動猿來,花驚烏去。閱邱壑之新趣,縱江湖之舊心。
新字:出芝田而計畝,入桃源而問津。菊花両岸,松声一邱。葉動猿来,花驚烏去。閲邱壑之新趣,縦江湖之旧心。
書き下し
芝田を出でて畝を計り、桃源に入りて津を問ふ。 菊花兩岸、松聲一邱。 葉動きて猿來り、花驚きて烏去る。 邱壑の新趣を閱し、江湖の舊心を縱にす。
現代語訳
霊芝の生える仙人の田から出て畝を数え、桃源郷に入って渡し場を尋ねます。菊の花が両岸に咲き、松風の音が丘一面に響きます。木の葉が動いて猿がやって来て、花が揺れて烏が飛び去ります。丘や谷の新しい趣を見て回り、江湖に遊んだ昔ながらの心をほしいままにします。
解説
仙境と隠棲の地を行き来する心の旅を、四字と六字の句で描いた一則です。芝田は、仙人が霊芝を育てる田のことです。桃源は陶淵明の桃花源記に描かれた理想郷、問津は渡し場を尋ねることで、桃花源記の結びに、その後は渡し場を尋ねる者もいなくなった、とあるのを踏まえています。菊花兩岸と松聲一邱は、陶淵明が愛した菊と松を並べた対句です。葉が動いて猿が来て、花が揺れて烏が去るという句は、小さな動きの連鎖を描いて山中の生き生きとした気配を伝えています。最後の江湖の舊心は、世俗を離れて自由に生きたいという昔からの思いのことです。心の奥にある古い願いを、ときには自由に解き放ってみたいものです。
この章句が説くこと
隠逸桃源自然神仙陶淵明
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