酔古堂剣掃 / 集素・往來は惟だ羊裘有るのみ
室距桃源,晨夕恆滋蘭菃;門開杜徑,往來惟有羊裘。
新字:室距桃源,晨夕恒滋蘭菃;門開杜径,往来惟有羊裘。
書き下し
室は桃源に距り、晨夕恆に蘭菃を滋し、門は杜徑に開き、往來は惟だ羊裘有るのみ。
現代語訳
住まいは桃源郷のように世間から隔たり、朝に夕にいつも蘭などの香草を育てています。門は人の通わない閉ざされた小道に向かって開いていて、行き来するのは羊の皮衣をまとった隠者だけです。
解説
世間から離れた住まいと、そこを訪れる人の品格を描いた一則です。桃源は陶淵明の桃花源記に描かれた、俗世と隔たった理想の里です。蘭菃はともに香草で、清らかな人柄の象徴として楚辞以来しばしば用いられます。杜徑は閉ざされた小道、つまり人の往来が絶えた道のことです。羊裘は羊の皮衣で、後漢の厳光が皇帝となった旧友の招きを避け、羊裘を着て釣りをしていたという故事から、隠者を指す言葉になりました。付き合う相手を選び、自分の時間を大切に守る暮らしは、情報や人付き合いに追われる今こそ意味を持つのかもしれません。
この章句が説くこと
隠逸交友清貧閑適桃源
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