酔古堂剣掃 / 集景・月は庭梧の第二枝に到る
賞花酣酒,酒浮園菊方三盞,睡醒問月,月到庭梧第二枝。此時此興,亦復不淺。
新字:賞花酣酒,酒浮園菊方三盞,睡醒問月,月到庭梧第二枝。此時此興,亦復不浅。
書き下し
花を賞して酒に酣なれば、酒は園菊を浮べて方に三盞、睡り醒めて月を問へば、月は庭梧の第二枝に到る。 此の時此の興、亦た復た淺からず。
現代語訳
花を愛でながら酒を存分に楽しめば、庭の菊の花びらを浮かべた酒は、ちょうど三杯目です。眠りから覚めて月はどこかと見れば、月は庭の青桐の二番目の枝にかかっています。このときのこの興趣は、まことに浅いものではありません。
解説
菊の酒と月を楽しむ秋の夜を、酒の杯数と月の位置という具体的な数で描いた一則です。酒に菊の花びらを浮かべて飲むのは、重陽の節句の習わしとしても知られ、長寿を願う風雅な飲み方です。三盞は三杯のことで、酔いすぎず、ほろ酔いのちょうどよい頃合いを表しています。一眠りして目覚め、月はどこかと見ると、庭の青桐の二番目の枝にかかっていると言います。時間の経過を、月が枝から枝へと移る位置で示しているのが見事です。酒の杯と月の枝という、身近なもので時の流れを感じ取る繊細な感覚が表れています。時計ではなく、月の位置や影の長さで時間を感じる夜を、たまには過ごしてみたいものです。
この章句が説くこと
風雅閑適月酒秋
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
-
『酔古堂剣掃』集豪・夜深くして花は睡る雲破れて月は窺ふ花の好き處、夜深くして花は睡る月明の中。
-
『酔古堂剣掃』集倩・地に席して小酌す一軒の明月、花影參差として、地に席して便ち小酌に宜し。 十里の青山、鳥聲斷續として、春を尋ねて幾度か長吟す。
-
『酔古堂剣掃』集韻・月來たりて俗を洗ふ春光濃やかなること酒に似たり、花故に人を醉はしむ。夜色澄めること水の如し、月來たりて俗を洗ふ。
-
『酔古堂剣掃』集豪・玉山頹れて芳草に眠る明月天に在り、秋聲樹に在り、珠箔卷きて嘯きて高摟に倚る。蒼苔地に在り、春酒壺に在り、玉山頹れて醉ひて芳草に眠る。
-
『酔古堂剣掃』集豪・花の為に妝を洗ふ春到れば十千の美酒、花の為に妝を洗ふ。夜來れば一片の名香、月の與に魄を熏ず。