酔古堂剣掃 / 集景・輞水淪漣として月と上下す
輞水淪漣,與月上下;寒山遠火,明滅林外,深巷小犬,吠聲如豹。村虛夜舂,復與疏鐘相間,此時獨坐,童仆靜默。
新字:輞水淪漣,与月上下;寒山遠火,明滅林外,深巷小犬,吠声如豹。村虚夜舂,復与疏鐘相間,此時独坐,童仆静黙。
書き下し
輞水淪漣として、月と上下し、寒山の遠火、林外に明滅す。 深巷の小犬、吠聲豹の如し。 村虛の夜舂、復た疏鐘と相間はる。 此の時獨り坐せば、童仆靜默たり。
現代語訳
輞川の水はさざ波を立て、映った月とともに上下に揺れています。寒々とした山の遠い灯火が、林の向こうで明るくなったり暗くなったりしています。奥まった路地の子犬の吠える声は、豹のように響きます。村里で夜に米をつく音が、まばらに鳴る鐘の音とかわるがわる聞こえます。このとき一人で座っていると、召使いの子どもたちもひっそりと黙っています。
解説
唐の詩人王維が、友人の裴迪に宛てた手紙、山中與裴秀才迪書の一節を採った一則です。王維は長安の郊外、輞川に別荘を構え、その景色を多くの詩に詠みました。淪漣はさざ波のことで、水面の月が波とともに上下するさまを描いています。遠くの灯火の明滅、路地の犬の声、村の夜の米つきの音、遠くの鐘の音と、光と音を一つずつ拾い上げて、冬の夜の静けさを浮かび上がらせています。犬の声を豹のようだと言うのは、静けさの中で小さな音が大きく響くことを示しています。詩人であり画家でもあった王維らしい、絵のような手紙です。夜の静けさの中で、遠くの音に耳を澄ませる時間を持ってみたいものです。
この章句が説くこと
自然静寂夜名文風雅
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