酔古堂剣掃 / 集景・白雲徘徊して終日去らず
白雲徘徊,終日不去。巖泉一支,潺湲齋中。春之晝,秋之夕,既清且幽,大得隱者之樂,惟恐一日移去。
新字:白雲徘徊,終日不去。巖泉一支,潺湲斎中。春之昼,秋之夕,既清且幽,大得隠者之楽,惟恐一日移去。
書き下し
白雲徘徊して、終日去らず。 巖泉一支、齋中に潺湲たり。 春の晝、秋の夕、既に清く且つ幽にして、大いに隱者の樂しみを得、惟だ一日も移り去らんことを恐る。
現代語訳
白い雲がさまよって、一日中立ち去りません。岩から湧く泉がひとすじ、書斎の中をさらさらと流れています。春の昼も秋の夕べも、清らかでひっそりとしていて、隠者の楽しみを存分に味わえます。ただ、一日でもここから移り去ることになるのを恐れるばかりです。
解説
雲と泉に囲まれた書斎の暮らしに、深く満ち足りている心を描いた一則です。白い雲が一日中あたりをさまよって去らないという冒頭は、人里離れた高い山にある住まいを思わせます。巖泉一支は、岩から湧き出す一筋の泉で、それが書斎の中を流れているというのは、水を建物の中に引き込んだ造りなのでしょう。潺湲はさらさらと水が流れる音です。春も秋も清らかで静かで、隠者の楽しみが十分に得られると言います。最後の、一日でも移り去ることを恐れるという結びに、この場所への深い愛着が表れています。今いる場所を離れたくないと心から思えることは、何よりの幸せなのかもしれません。
この章句が説くこと
隠逸自然閑適住まい愛着
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