酔古堂剣掃 / 集靈・此の中の主人と作る
竹籬茅舍,石屋花軒,松柏群吟,藤蘿翳景;流水繞戶,飛泉挂簷;煙霞欲棲,林壑將瞑。中處野叟山翁四五,予以閒身,作此中主人。坐沉紅燭,看遍青山,消我情腸,任他冷眼。
新字:竹籬茅舎,石屋花軒,松柏群吟,藤蘿翳景;流水繞戸,飛泉挂簷;煙霞欲棲,林壑将瞑。中処野叟山翁四五,予以閒身,作此中主人。坐沈紅燭,看遍青山,消我情腸,任他冷眼。
書き下し
竹籬茅舍、石屋花軒、松柏群がり吟じ、藤蘿景を翳ふ。流水戶を繞り、飛泉簷に挂る。煙霞棲まんと欲し、林壑將に瞑れんとす。中に野叟山翁四五處り、予閒身を以て、此の中の主人と作る。坐して紅燭を沈め、青山を看遍し、我が情腸を消し、他の冷眼に任す。
現代語訳
竹の垣根に茅ぶきの家、石造りの部屋に花の咲く軒。松や柏は風に群がって歌い、藤やかずらが日差しを覆っています。流れる水が戸口をめぐり、滝の水が軒先にかかっています。もやや霞がとどまろうとし、林や谷はまもなく暮れようとしています。その中に野の老人、山の翁が四、五人いて、私は暇な身として、この中の主人となっています。座って紅いろうそくが燃え尽きるまで過ごし、青い山をすっかり眺め尽くして、わが胸のうちの思いを晴らし、世間の冷ややかな目などは勝手にさせておきます。
解説
理想の隠棲の暮らしを、一幅の絵のように描いた一則です。竹籬茅舍は竹垣と茅ぶきの家、藤蘿は藤やかずら、翳ふは覆い隠すことです。飛泉は滝、林壑は林と谷です。野叟山翁は田舎の老人たちで、身分や学問を気にせず付き合える仲間です。閒身は官職などの務めを持たない自由な身です。最後の、他の冷眼に任すという一句に、世間からどう見られようと、自分の選んだ暮らしに満足しているという強い意志が表れています。人の評価を気にせず、自分が心地よいと思える場所と仲間を大切にする生き方は、今の時代にも一つの理想として響きます。
この章句が説くこと
隠逸閑適自然自由交友
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