酔古堂剣掃 / 集景・城市為るか山林為るかを辨ぜず
山曲小房,人園窈窕幽徑,綠玉萬竿。中匯澗水為曲池,環池竹樹雲石,其後平岡透迤,古松鱗鬣,松下皆灌叢雜木,蔦蘿駢織,亭榭翼然。夜半鶴唳清遠,恍如宿花塢;間聞哀猿啼嘯,嘹嚦驚霜,初不辨其為城市為山林也。
新字:山曲小房,人園窈窕幽径,緑玉万竿。中匯澗水為曲池,環池竹樹雲石,其後平岡透迤,古松鱗鬣,松下皆灌叢雑木,蔦蘿駢織,亭榭翼然。夜半鶴唳清遠,恍如宿花塢;間聞哀猿啼嘯,嘹嚦驚霜,初不弁其為城市為山林也。
書き下し
山曲の小房、人園に窈窕たる幽徑、綠玉萬竿。 中に澗水を匯めて曲池と為し、池を環りて竹樹雲石、其の後は平岡透迤として、古松鱗鬣あり、松下は皆灌叢雜木、蔦蘿駢び織り、亭榭翼然たり。 夜半鶴唳清遠にして、恍として花塢に宿るが如し。 間ま哀猿の啼嘯、嘹嚦として霜に驚くを聞けば、初め其の城市為るか山林為るかを辨ぜざるなり。
現代語訳
山の曲がり目にある小さな部屋、庭には奥深く静かな小道があり、緑の玉のような竹が一万本も茂っています。中ほどには谷川の水を集めて曲がりくねった池を作り、池のまわりには竹や木、雲のような石があり、その後ろには平らな丘がうねうねと続いて、古い松が鱗やたてがみのような樹皮と枝を見せています。松の下はみな低い茂みや雑木で、つたやかずらが並んで編み合わされ、東屋や高殿が翼を広げたように建っています。真夜中に鶴の鳴き声が澄んで遠く響くと、まるで花に囲まれた小さな村に泊まっているような心地がします。ときおり悲しげな猿の叫び声が、霜に驚いたように高く響くのを聞くと、はじめはここが町なのか山林なのか見分けがつかなくなるのです。
解説
町の中にありながら山林のような趣を持つ庭園を描いた一則です。窈窕は奥深く静かなさま、綠玉萬竿は緑の玉のような竹が無数に茂るさまです。谷川の水を引いて曲池を作り、竹や石を配し、丘には古い松、その下には雑木とつたと、人の手で山林を再現した庭の構成がよくわかります。鱗鬣は、松の樹皮を鱗に、枝葉をたてがみにたとえた言葉です。翼然は、屋根の反りが鳥の翼のように広がっている様子です。底本の透迤は逶迤の誤り、人園は入園の誤りとみられます。夜中の鶴や猿の声を聞くと、町中か山中かわからなくなるという結びに、この庭の見事さが凝縮されています。都会の中に自然を感じられる場所を持つことは、心の平穏を保つ知恵でしょう。
この章句が説くこと
自然造園隠逸風雅都市
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