酔古堂剣掃 / 集素・火を撥ひて芋を煨く
夜寒坐小室中,擁爐閒話。渴則敲冰煮茗;飢則撥火煨芋。
新字:夜寒坐小室中,擁炉閒話。渇則敲冰煮茗;飢則撥火煨芋。
書き下し
夜寒く小室の中に坐し、爐を擁して閒話す。 渴けば則ち冰を敲きて茗を煮、飢うれば則ち火を撥ひて芋を煨く。
現代語訳
寒い夜に小さな部屋に座り、炉を囲んでのんびりと語り合います。喉が渇けば氷を割って茶を煮、腹が減れば灰をかき分けて芋を焼きます。
解説
冬の夜の素朴な楽しみを描いた一則です。擁炉は炉を抱えるように囲むこと、閑話はとりとめのない話です。敲冰煮茗は、凍った水を割って茶を煮ることで、冬の山居らしい趣があります。煨芋は炉の灰の中に芋を埋めて焼くことです。唐の禅僧懶残が、火で芋を焼きながら、訪ねてきた李泌に芋を分け与えたという話が伝わり、煨芋は隠者の清貧の象徴として詩にもよく詠まれました。贅沢は何もないのに、温かさと満ち足りた気持ちが伝わってきます。寒い夜に家族や友と囲む鍋や焼き芋のように、ささやかな楽しみこそ心を温めるのだと思わせます。
この章句が説くこと
清貧閑適冬茶素朴
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集綺・野花目に艷なり野花目に艷なり、必ずしも牡丹ならず。 村酒人を醉はしむ、何ぞ綠蟻を須ゐん。
-
『呻吟語』内篇・養生・太樸は天地の命脈太樸は、天地の命脈なり。太樸散じて天地の壽妖卜す可し。故に萬物蕃れば、則ち造化の元精耗散す。木の實多き者は根傷み、草の莖出づる者は根虛し、費用廣き者は家貧しく、言行多き者は神竭く。皆な妖道なり。老子の受用の處は、盡く此の中に看破す。
-
『酔古堂剣掃』集醒・童子は智少なくして愈〻完し童子は智少なし、愈〻少なくして愈〻完し。成人は智多し、愈〻多くして愈〻散ず。
-
『呻吟語』内篇・應務・無用の樸は君子貴ばず無用の樸は、君子貴ばず。機械變詐を事とせずと雖も、德慧術知に至りては、亦た無かる可からず。
-
論語・先進篇子曰く、先進の礼楽に於けるは、野人なり。後進の礼楽に於けるは、君子なり。如し之を用いば、則ち吾は先進に従わん。
-
論語・八佾篇子夏問いて曰く、「巧笑倩たり、美目盼たり、素以て絢を為すとは、何の謂ぞや」と。子曰く、「絵事は素より後にす」と。曰く、「礼は後か」と。子曰く、「予を起こす者は商なり。始めて与に詩を言うべきのみ」と。