酔古堂剣掃 / 集景・神情爽やかに滌はる
一抹萬家,煙橫樹色,翠樹欲流,淺深間布,心目競觀,神情爽滌。
新字:一抹万家,煙横樹色,翠樹欲流,浅深間布,心目競観,神情爽滌。
書き下し
一抹の萬家、煙樹色に橫たはり、翠樹流れんと欲し、淺深間ま布き、心目競ひ觀て、神情爽やかに滌はる。
現代語訳
ひと刷けの筆で描いたような無数の家々に、靄が木々の色の上に横たわり、緑の木々は流れ出しそうなほど瑞々しく、その色が浅く深く入りまじって広がっています。心も目も競うようにそれを眺め、気持ちがすっきりと洗い清められます。
解説
高い所から眺めた町と木々の景色を、一幅の絵のように描いた一則です。一抹は、筆でひと刷けしたような、ひとすじの眺めのことで、遠くに広がる無数の家並みを表しています。煙樹色に横たはりは、家々のあいだの木々に靄がかかり、帯のようにたなびいている様子です。翠樹流れんと欲しは、緑があまりに瑞々しいので、今にも流れ出しそうだという表現です。淺深間ま布きは、濃い緑と淡い緑が入りまじって広がっているさまで、山水画の墨の濃淡を思わせます。心目競ひ觀ては、目だけでなく心までが景色を奪い合うように見入っている様子です。見晴らしのよい場所で深呼吸するだけで、気持ちが洗われる経験は誰にでもあるでしょう。
この章句が説くこと
自然風雅景色心境眺望
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