酔古堂剣掃 / 集情・山翠簾を撲つ
山翠撲簾,卷不起青蔥一片,樹陰流徑,掃不開芳影幾重。
新字:山翠撲簾,巻不起青蔥一片,樹陰流径,掃不開芳影幾重。
書き下し
山翠簾を撲ち、青蔥一片を卷き起さず、樹陰徑に流れ、芳影の幾重なるを掃ひ開かず。
現代語訳
山の緑が簾に打ち寄せてきて、簾を巻き上げてもその一面の青々とした色は巻き取れず、木陰が小道に流れこんで、幾重にも重なる香しい影は掃いても払えません。
解説
山の緑と木陰の深さを、簾と箒という身近な道具で描いた機知ある対句です。撲つは打ち寄せること、青蔥は青々と茂るさまです。簾を巻けば景色が見えるはずなのに、緑があまりに濃くて簾ごと巻き上げることはできない、影は掃いても消えない、という言い方で、自然の豊かさが人の手に負えないほどであることを表しています。集情にあるのは、この緑への愛着そのものを情としてとらえているからでしょう。自然は人がどうこうできないからこそ、心を解き放ってくれます。窓の外の緑をただ眺める時間を、忙しい日にこそ持ちたいものです。
この章句が説くこと
自然閑適風景緑風雅
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