酔古堂剣掃 / 集景・青蘿を墻垣と為す
喬松十數株,修竹千餘竿;青蘿為墻垣,白石為鳥道;流水周於舍下,飛泉落於檐間;綠柳白蓮,羅生池砌:時居其中,無不快心。
新字:喬松十数株,修竹千余竿;青蘿為墻垣,白石為鳥道;流水周於舎下,飛泉落於檐間;緑柳白蓮,羅生池砌:時居其中,無不快心。
書き下し
喬松十數株、修竹千餘竿。 青蘿を墻垣と為し、白石を鳥道と為す。 流水舍下を周り、飛泉檐間に落つ。 綠柳白蓮、池砌に羅生す。 時に其の中に居れば、快心ならざる無し。
現代語訳
高い松が十数本、長い竹が千本あまり。青いつたを垣根とし、白い石を細い小道とします。流れる水が家の下をめぐり、飛び散る泉が軒先に落ちてきます。緑の柳と白い蓮が、池のほとりや石段に並んで生えています。ときどきその中に身を置けば、心が晴れないことはありません。
解説
自然の素材だけで作られた住まいの姿を、四字と六字の句を重ねて描いた一則です。喬松と修竹、つまり高い松と長い竹を数で示し、その規模の大きさを感じさせます。人工の塀の代わりに青いつたを、舗装した道の代わりに白い石を用いるところに、自然をそのまま生かす美意識が表れています。鳥道は、鳥しか通れないような細く険しい道のことです。家の下を流れる水と、軒から落ちる泉は、音と涼しさを住まいにもたらします。緑の柳と白い蓮の色の対比も鮮やかです。住まいを飾るのに高価な素材を使わなくても、植物や石、水の音を取り入れるだけで、心の晴れる空間を作ることはできるのです。
この章句が説くこと
自然住まい閑適風雅造園
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・清くして齒を漱ぐべし密竹雲を軼ぎ、長林日を蔽ふ、淺翠嬌青、煙を籠め濕を惹く。 數椽を其の間に構へ、竹樹を籬と為し、復た垣を葺かず。 中に一泓の流水有り、清くして齒を漱ぐべく、曲りて觴を流すべし。 其の間に放歌すれば、離披蒨郁、神滌はれ意閑かなり。
-
『酔古堂剣掃』集靈・此の中の主人と作る竹籬茅舍、石屋花軒、松柏群がり吟じ、藤蘿景を翳ふ。流水戶を繞り、飛泉簷に挂る。煙霞棲まんと欲し、林壑將に瞑れんとす。中に野叟山翁四五處り、予閒身を以て、此の中の主人と作る。坐して紅燭を沈め、青山を看遍し、我が情腸を消し、他の冷眼に任す。
-
『酔古堂剣掃』集倩・淡宕として畫の如し野に郊居を築くに、綽として規制有り。 茅亭草舍、棘垣竹籬、構へ列ぬること方無く、淡宕として畫の如し、花間の紅白、樹に行款無し。 倘徉灑落たり、何ぞ仙居に異ならん。
-
『酔古堂剣掃』集景・城市為るか山林為るかを辨ぜず山曲の小房、人園に窈窕たる幽徑、綠玉萬竿。 中に澗水を匯めて曲池と為し、池を環りて竹樹雲石、其の後は平岡透迤として、古松鱗鬣あり、松下は皆灌叢雜木、蔦蘿駢び織り、亭榭翼然たり。 夜半鶴唳清遠にして、恍として花塢に宿るが如し。 間ま哀猿の啼嘯、嘹嚦として霜に驚くを聞けば、初め其の城市為るか山林為るかを辨ぜざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集景・徑は曲らんことを欲す門內に徑有り、徑は曲らんことを欲す。徑轉じて屏有り、屏は小ならんことを欲す。屏進みて階有り、階は平らかならんことを欲す。階の畔に花有り、花は鮮やかならんことを欲す。花の外に墻有り、墻は低からんことを欲す。墻の內に松有り、松は古からんことを欲す。松の底に石有り、石は怪ならんことを欲す。石の面に亭有り、亭は樸ならんことを欲す。亭の後に竹有り、竹は疏ならんことを欲す。竹盡きて室有り、室は幽ならんことを欲す。室の旁に路有り、路は分れんことを欲す。路合して橋有り、橋は危からんことを欲す。橋の邊に樹有り、樹は高からんことを欲す。樹の陰に草有り、草は青からんことを欲す。草の上に渠有り、渠は細からんことを欲す。渠引きて泉有り、泉は瀑ならんことを欲す。泉去りて山有り、山は深からんことを欲す。山の下に屋有り、屋は方ならんことを欲す。屋の角に圃有り、圃は寬からんことを欲す。圃の中に鶴有り、鶴は舞はんことを欲す。鶴報じて客有り、客は俗ならず。客至りて酒有り、酒は卻けざらんことを欲す。酒行りて醉ひ有り、醉ひては歸らざらんことを欲す。
-
『酔古堂剣掃』集景・流水を聽き激湍を看る長松怪石、墟落を去ること一二十里を下らず。 鳥徑崖に緣り、水を草莽の間に涉る。 數四左右、兩三家相望み、雞犬の聲相聞ゆ。 竹籬草舍、其の間に燕處し、蘭菊之を藝ゑ、霜月春風、日に餘思有り。 水に臨みて時に桃梅を種ゑ、兒童婢仆皆布衣短褐にして、以て薪水を給し、村酒を釀して之を飲む。 案に詩書、莊周、太玄、楚辭、黃庭、陰符、楞嚴、圓覺有り、數十卷のみ。 藜を杖つき屐を躡み、窮谷大川に往來し、流水を聽き、激湍を看、澄潭を鑒み、危橋を步み、茂樹に坐し、幽壑を探り、高峰に升る、亦た樂しからずや。