酔古堂剣掃 / 集景・翔翔乎たる空絲
眇眇乎春山,淡冶而欲笑,翔翔乎空絲,綽約而自飛。
新字:眇眇乎春山,淡冶而欲笑,翔翔乎空糸,綽約而自飛。
書き下し
眇眇乎たる春山、淡冶にして笑はんと欲し、翔翔乎たる空絲、綽約として自ら飛ぶ。
現代語訳
はるかに遠い春の山は、淡くあでやかで、今にも笑い出しそうです。ひらひらと空を舞う糸は、しなやかにひとりでに飛んでいきます。
解説
春の山と空に漂う糸を、柔らかく描いた対句です。眇眇乎は遠くかすかに見えるさまで、遠くの春の山が淡く色づいて、笑い出しそうに見えると言います。前の則の、春山は笑うが如し、と同じ発想です。後の句の空絲は、春の晴れた日に空中を漂う蜘蛛の糸や、陽炎のようなもので、遊糸とも呼ばれ、春の風物として詩に詠まれてきました。翔翔乎はひらひらと舞うさま、綽約はしなやかで美しいさまです。山という大きなものと、糸という小さなものを並べることで、春の空気全体が柔らかく動いている様子が伝わります。春の晴れた日に、光の中を漂う小さなものに目を留めてみてはどうでしょう。
この章句が説くこと
自然風雅春山水繊細
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