酔古堂剣掃 / 集靈・空翠幾重山又山
飛泉數點雨非雨,空翠幾重山又山。
新字:飛泉数点雨非雨,空翠幾重山又山。
書き下し
飛泉數點雨にして雨に非ず、空翠幾重山又山。
現代語訳
滝のしぶきが数滴飛んできて、雨のようでいて雨ではなく、空に溶ける緑が幾重にも重なって、山また山が続いています。
解説
山中の滝と重なる山々の景色を、簡潔に描いた対句です。飛泉は滝、空翠は空に溶けこむような山の緑です。滝のしぶきが風に乗って飛んでくるのを、雨にして雨に非ず、と言ったところに、ほのかなユーモアと細やかな観察があります。後半の、山又山、という繰り返しは、奥へ奥へと続く山並みの深さを、そのまま言葉の響きで伝えています。わずか十四字で、肌に触れるしぶきの冷たさと、目に映る緑の広がりの両方が感じられる見事な句です。山や滝のある場所に出かけると、細かな水しぶきや重なる山並みに、日常では味わえない清々しさを感じることができます。
この章句が説くこと
自然山水風景閑適詩
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集景・秋は山に入りて倍ます清し山は秋を經て轉た淡く、秋は山に入りて倍ます清し。
-
『酔古堂剣掃』集韻・空山に雨掛かる謝し將て縹緲として歸る處無く、斷浦に雲沈む。行きて紛紜として繫がれざる時に到れば、空山に雨掛かる。
-
『酔古堂剣掃』集景・霽色一新す山を雨後に看れば、霽色一新し、便ち青山の倍ます秀づるを覺ゆ。 月を江中に玩べば、波光千頃、頓に明月をして輝きを增さしむ。
-
『酔古堂剣掃』集情・山翠簾を撲つ山翠簾を撲ち、青蔥一片を卷き起さず、樹陰徑に流れ、芳影の幾重なるを掃ひ開かず。
-
『酔古堂剣掃』集奇・驟雨橫に飛ぶ浮雲回り度りて、月影を開きて彎環たり。 驟雨橫に飛びて、星精を挾みて搖動す。
-
『酔古堂剣掃』集景・神情爽やかに滌はる一抹の萬家、煙樹色に橫たはり、翠樹流れんと欲し、淺深間ま布き、心目競ひ觀て、神情爽やかに滌はる。