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酔古堂剣掃 / 集景・此れ亦た以て老を娛しましむべし

良辰美景,春暖秋涼。負杖躡履,逍遙自樂。臨池觀魚,披林聽鳥;酌酒一杯,彈琴一曲;求數刻之樂,庶幾居常以待終。築室數楹,編槿為籬,結茅為亭。以三畝蔭竹樹栽花果,二畝種蔬菜,四壁清曠,空諸所有,蓄山童灌園剃草,置二三胡床著亭下,挾書劍以伴孤寂,攜琴奕以遲良友,此亦可以娛老。

新字:良辰美景,春暖秋涼。負杖躡履,逍遥自楽。臨池観魚,披林聴鳥;酌酒一杯,弾琴一曲;求数刻之楽,庶幾居常以待終。築室数楹,編槿為籬,結茅為亭。以三畝蔭竹樹栽花果,二畝種蔬菜,四壁清曠,空諸所有,蓄山童灌園剃草,置二三胡床著亭下,挟書剣以伴孤寂,攜琴奕以遅良友,此亦可以娯老。

書き下し

良辰美景、春暖かに秋涼し。 杖を負ひ履を躡み、逍遙して自ら樂しむ。 池に臨みて魚を觀、林を披きて鳥を聽く。 酒一杯を酌み、琴一曲を彈ず。 數刻の樂しみを求め、庶幾はくは常に居りて以て終りを待たん。 室數楹を築き、槿を編みて籬と為し、茅を結びて亭と為す。 三畝を以て竹樹に蔭ひ花果を栽ゑ、二畝に蔬菜を種う。 四壁清曠、諸の有る所を空しくし、山童を蓄へて園に灌ぎ草を剃らしめ、二三の胡床を置きて亭下に著け、書劍を挾みて以て孤寂に伴ひ、琴奕を攜へて以て良友を遲つ、此れ亦た以て老を娛しましむべし。

現代語訳

よい時節、美しい景色、春は暖かく秋は涼しい。杖を背に負い、履物を履いて、気ままに歩きまわって自分で楽しみます。池のほとりで魚を眺め、林をかき分けて鳥の声を聞きます。酒を一杯くみ、琴を一曲弾きます。わずかな時間の楽しみを求め、ふだんどおりの暮らしを守って人生の終わりを待ちたいものです。部屋を数間建て、むくげを編んで垣根にし、茅を束ねて東屋を作ります。三畝には竹や木を植えて日陰を作り、花や果樹を植え、二畝には野菜を植えます。四方の壁はすっきりと広く、余計なものは何も置かず、山里の少年を雇って庭に水をやり草を刈らせ、腰掛けを二つ三つ東屋の下に置いて、書物と剣を抱えて孤独の友とし、琴と碁を用意してよい友の訪れを待ちます。これもまた老後を楽しむのにふさわしいものです。

解説

老後の穏やかな暮らしの設計図を描いた一則です。前半は、季節のよい日に杖をついて歩き、魚を見て鳥の声を聞き、酒と琴を楽しむ一日を描いています。居常以て終りを待つは、列子に見える栄啓期の言葉、貧しさは士の常、死は人の終わり、常に居りて終りを待つ、を踏まえたもので、ありのままの境遇を受け入れて生きる姿勢を表しています。後半は、住まいの間取り、庭の割り振り、家具や道具に至るまで具体的に描いています。書劍と琴奕は、一人でいるときの友と、友が来たときの楽しみとを分けて用意しているのが面白いところです。老後の暮らしを、お金の計算だけでなく、一日の過ごし方から具体的に思い描いてみることも大切でしょう。

この章句が説くこと

老境閑適知足隠逸住まい

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