酔古堂剣掃 / 集景・前に碧梧を栽ゑ後に翠竹を種う
凡靜室,須前栽碧梧,後種翠竹,前檐放步,北用暗窗,春冬閉之,以避風雨,夏秋可開,以通涼爽。然碧梧之趣,春冬落葉,以舒負暄融和之樂,夏秋交蔭,以蔽炎爍蒸烈之氣,四時得宜,莫此為勝。
新字:凡静室,須前栽碧梧,後種翠竹,前檐放歩,北用暗窗,春冬閉之,以避風雨,夏秋可開,以通涼爽。然碧梧之趣,春冬落葉,以舒負暄融和之楽,夏秋交蔭,以蔽炎爍蒸烈之気,四時得宜,莫此為勝。
書き下し
凡そ靜室は、須らく前に碧梧を栽ゑ、後に翠竹を種うべし。 前檐は步を放ち、北は暗窗を用ひ、春冬は之を閉ぢて、以て風雨を避け、夏秋は開くべく、以て涼爽を通ず。 然して碧梧の趣は、春冬は葉を落して、以て負暄融和の樂しみを舒べ、夏秋は蔭を交へて、以て炎爍蒸烈の氣を蔽ふ、四時宜しきを得ること、此より勝れるは莫し。
現代語訳
およそ静かな部屋を作るなら、前には青桐を植え、後ろには緑の竹を植えるべきです。前の軒先は広く歩けるようにし、北側には閉ざせる窓を設け、春と冬はそれを閉じて風雨を避け、夏と秋は開けて涼しい風を通します。そして青桐のよいところは、春と冬には葉を落として、日なたぼっこの和やかな楽しみを与え、夏と秋には葉を茂らせて日陰を作り、焼けつくような蒸し暑さを遮ってくれることです。四季それぞれにふさわしいという点で、これに勝るものはありません。
解説
静かな部屋の作り方を、植栽と窓の配置から具体的に説いた一則です。碧梧は青桐で、鳳凰が止まる木とされ、文人の庭に好まれました。北側の暗窗は、閉じたり開けたりできる窓で、季節に応じて風を調節する工夫です。とくに青桐の利点として挙げられているのが、落葉樹であることです。冬には葉を落として日差しを通し、夏には葉を茂らせて日陰を作るので、四季を通じて快適に過ごせます。負暄は、冬の日なたで背中を温めることです。これは今日でいう、落葉樹を南側に植えて冬の日射を取り込み夏の日射を遮る、環境に配慮した住まいの知恵と同じです。先人の工夫は、そのまま今の暮らしにも生かせるのです。
この章句が説くこと
自然住まい四季工夫造園
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