酔古堂剣掃 / 集景・每に茗を啜りて之に對す
庭前幽花時發,披覽既倦,每啜茗對之。香色撩人,吟思忽起,遂歌一古詩,以適清興。
新字:庭前幽花時発,披覧既倦,毎啜茗対之。香色撩人,吟思忽起,遂歌一古詩,以適清興。
書き下し
庭前の幽花時に發き、披覽既に倦めば、每に茗を啜りて之に對す。 香色人を撩り、吟思忽ち起れば、遂に一古詩を歌ひ、以て清興に適ふ。
現代語訳
庭先にひっそりと咲く花がときおり開き、書物を読むのに疲れると、いつも茶をすすりながら花と向かい合います。花の香りと色に心をくすぐられ、詩を吟じたい気持ちがふと湧き起これば、そのまま古い詩を一つ歌って、清らかな興趣を満たします。
解説
読書の合間の、茶と花と詩のひとときを描いた一則です。幽花は目立たずひっそりと咲く花、披覽は書物を開いて読むことです。読書に疲れたら、茶を飲みながら庭の花を眺めるという、気分転換の仕方が描かれています。撩は、からかう、くすぐるという意味で、花の香りや色が人の心をそっと刺激するさまを表しています。そこから詩を吟じたくなり、古詩を一つ歌って清らかな興に身をゆだねます。読書から茶へ、茶から花へ、花から詩へと、心が自然に移っていく流れが心地よく描かれています。仕事に疲れたときは、無理に続けず、お茶を淹れて窓の外を眺める小さな休憩を挟むと、次の意欲が湧いてくるかもしれません。
この章句が説くこと
閑適読書風雅茶休息
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集醒・茗は頻りに尤も苦からんことを欲す花棚石磴、小坐して微醺す。歌は獨りならんことを欲し、尤も細からんことを欲す。茗は頻りならんことを欲し、尤も苦からんことを欲す。
-
『酔古堂剣掃』集素・燈下に花を玩び簾內に月を看る燈下に花を玩び、簾內に月を看、雨後に景を觀、醉裏に詩を題し、夢中に書聲を聞く、皆別趣有り。
-
『酔古堂剣掃』集靈・詩卷を快讀して以て之を咽む鳥啼き花落ち、欣然として心に會する有り。小奴を遣はし、癭樽を挈げ、白酒を酤ひ、一梨花瓷の盞を釂す。急ぎ詩卷を取り、快讀すること一過にして以て之を咽み、蕭然として其の塵埃の間に在るを知らざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集素・茗を瀹て棋を奕す因りて舊廬を葺き、渠を疏して泉を引き、周らすに花木を以てし、日に其の間に哦す。 故人過り逢へば、茗を瀹て棋を奕し、杯酒淋浪として、殆ど塵中の物に非ざるなり。
-
『酔古堂剣掃』集倩・閑中の滋味晨に起きて窗を推せば、紅雨亂れ飛ぶ、閑花笑ふなり。 綠樹聲有り、閑鳥啼くなり。 煙嵐滅沒す、閑雲度るなり。 藻荇數ふべし、閑池靜かなり。 風細く簾青く、林空しく月印す、閑庭峭なり。 山扉晝も扃せども、剝啄每に閑侶多し。 帖括は人に因れども、几案每に閑編多し。 繡佛長齋、禪心釋諦、而して念ひに閑想多く、語に閑詞多し。 閑中の滋味、洵に樂しむに足るなり。
-
『酔古堂剣掃』集靈・梅月半灣、書窗の殘雪を掩映す竹風一陣、茶灶の疏煙を飄颺し、梅月半灣、書窗の殘雪を掩映す。