酔古堂剣掃 / 集醒・茗は頻りに尤も苦からんことを欲す
花棚石磴,小坐微醺。歌欲獨,尤欲細;茗欲頻,尤欲苦。
新字:花棚石磴,小坐微醺。歌欲独,尤欲細;茗欲頻,尤欲苦。
書き下し
花棚石磴、小坐して微醺す。歌は獨りならんことを欲し、尤も細からんことを欲す。茗は頻りならんことを欲し、尤も苦からんことを欲す。
現代語訳
花の棚の下、石の階段に、しばらく腰かけてほろ酔い気分になります。歌は一人で歌うのがよく、とりわけ細やかな声がよいのです。茶は何度もいれるのがよく、とりわけ苦いのがよいのです。
解説
花の下でくつろぐひとときの楽しみ方を、細やかな好みとともに描いた一則です。花棚は藤や薔薇を這わせた花の棚、石磴は石の段、微醺はほろ酔いです。そこで楽しむ歌は、大勢で騒ぐのでなく一人で、しかもか細い声で歌うのがよいと言います。茶は何度も淹れ、しかも苦みのあるものがよいと言います。にぎやかさや甘さより、静けさと渋みを好む文人の美意識がよく表れています。集醒に入っているのは、世の喧騒に酔う人とは対照的な、醒めた楽しみ方を示すためでしょう。楽しみにも品というものがあります。大勢での派手な遊びばかりでなく、一人で静かに味わう時間の豊かさを知っておきたいものです。
この章句が説くこと
閑適風雅喫茶独楽静寂
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