酔古堂剣掃 / 集素・菜甲初めて長ずるは酥酪に過ぐ
菜甲初長,過於酥酪。寒雨之夕,呼童摘取,佐酒夜談,嗅其清馥之氣,可滌胸中柴荊,何必純灰三斛!
新字:菜甲初長,過於酥酪。寒雨之夕,呼童摘取,佐酒夜談,嗅其清馥之気,可滌胸中柴荊,何必純灰三斛!
書き下し
菜甲初めて長ずるは、酥酪に過ぐ。 寒雨の夕、童を呼びて摘み取らしめ、酒を佐けて夜談し、其の清馥の氣を嗅げば、胸中の柴荊を滌ふべし、何ぞ必ずしも純灰三斛ならんや。
現代語訳
野菜の若芽が伸びはじめたものは、乳製品のごちそうにも勝ります。冷たい雨の降る夕方、子どもの召使いを呼んで摘み取らせ、酒の肴にして夜更けまで語り合い、その清らかな香りをかげば、胸の中にはびこる雑木のような濁りも洗い流せます。どうして灰を三斛も飲んで腸を洗う必要があるでしょうか。
解説
畑の若菜の味わいを、ぜいたくな食べ物以上のものとして讃えた一則です。菜甲は野菜の芽生えたばかりの若葉、酥酪は牛や羊の乳から作る濃厚な食品で、ごちそうの代表です。寒い雨の夜に若菜を摘んで酒の肴にし、語り合う情景が、素朴で温かく描かれています。柴荊は雑木や荊で、ここでは胸の中のもやもやとした俗念の喩えです。純灰三斛は、灰で腸を洗い清めるという古い言い回しを踏まえた表現とみられます。季節の若い野菜を味わうだけで、心の濁りまで洗われるという感覚は、旬の食材を大切にする今の暮らしにもそのまま通じるでしょう。
この章句が説くこと
清貧自然飲食知足交友
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