酔古堂剣掃 / 集素・年年落第して遷鶯に泣く
年年落第,春風徒泣於遷鶯;處處羈游,夜雨空悲於斷雁。金壺霏潤,瑤管舂容。
新字:年年落第,春風徒泣於遷鶯;処処羈游,夜雨空悲於断雁。金壺霏潤,瑤管舂容。
書き下し
年年落第し、春風徒らに遷鶯に泣く。 處處に羈游し、夜雨空しく斷雁に悲しむ。 金壺霏として潤ひ、瑤管舂容たり。
現代語訳
毎年のように試験に落ち、春風の中で、谷から高い木へ移るうぐいすを見てむなしく泣きます。あちこちを旅してさすらい、夜の雨の中で、群れからはぐれた雁の声にむなしく悲しみます。それでも金の墨壺はしっとりと潤い、玉の筆管はゆったりと動きます。
解説
科挙に落ち続け、旅に身をやつす文人の悲哀を詠んだ一則です。遷鶯は、詩経に鳥が深い谷から出て高い木に遷るとあるのに基づき、科挙に及第して出世することの喩えになりました。他人の及第を見て泣く自分と、はぐれた雁に身を重ねる旅の夜とが対になっています。斷雁は群れから離れた雁で、孤独な旅人の象徴です。最後の金壺と瑤管は解釈の分かれる語ですが、墨壺と筆と取れば、失意の中でも筆を執り続ける姿と読めます。試験や昇進でつまずいた日も、書くことや学ぶことを手放さなければ、それが次の支えになるのでしょう。
この章句が説くこと
立志忍耐学問失意旅
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