酔古堂剣掃 / 集素・一泓の溪水柳分け開く
一泓溪水柳分開,盡道清虛攪破;三月林光花帶去,莫言香分消殘。
新字:一泓渓水柳分開,尽道清虚攪破;三月林光花帯去,莫言香分消残。
書き下し
一泓の溪水柳分け開く、盡く清虛攪き破らると道ふ。 三月の林光花帶び去る、香分かれて消え殘すと言ふ莫かれ。
現代語訳
ひとすじの谷川の流れを、柳の枝が分けて開いています。人はみな、澄みきった静けさがかき乱されたと言います。三月の林の光を、花が帯びて持ち去っていきます。香りが散って消え残るばかりだとは言わないでください。
解説
移ろう景色を、損なわれたものとしてではなく、別の美しさとして受け止めようとする一則です。一泓は、ひとたまり、ひとすじの水を数える言葉です。前半では、澄んだ水面に柳が垂れて流れを分けるさまを、人々は清虛を乱すものと見ると言います。後半では、晩春の花が林の光を帯びて散っていくさまを、香りが消えるだけと嘆くなと諭します。句の意味は取りにくいところもありますが、変化を欠損と決めつけない眼差しが読み取れます。予定が崩れたり状況が変わったりしたときも、失われたものより新たに加わった趣に目を向けると、心が軽くなるかもしれません。
この章句が説くこと
自然風雅無常見方春
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