酔古堂剣掃 / 集素・衡門の下、琴有り書有り
衡門之下,有琴有書,載彈載詠,爰得我娛;豈無他好,樂是幽居。 朝為灌園,夕偃蓬廬。
新字:衡門之下,有琴有書,載弾載詠,爰得我娯;豈無他好,楽是幽居。 朝為灌園,夕偃蓬廬。
書き下し
衡門の下、琴有り書有り、載ち彈じ載ち詠じ、爰に我が娛しみを得たり。 豈に他の好み無からんや、是の幽居を樂しむ。 朝には園に灌ぐことを為し、夕べには蓬廬に偃す。
現代語訳
冠木門の粗末な家の下には、琴があり書物があります。琴を弾いたり詩を吟じたりして、ここに私の楽しみを得ています。ほかに好むものがないわけではありませんが、この静かな住まいを楽しんでいるのです。朝には畑に水をやり、夕べには蓬で葺いた小屋に横になります。
解説
東晋の陶淵明の四言詩、答龐参軍の一節で、簡素な隠居暮らしの満ち足りた楽しみをうたっています。衡門は横木を渡しただけの粗末な門で、『詩経』陳風の衡門の詩以来、隠者の住まいを指す言葉です。載弾載詠は琴を弾いたり詩を詠じたりすること、爰はここにという意味です。豈無他好は、ほかに好きなものがないわけではないという言い方で、他の楽しみを知ったうえで、あえてこの暮らしを選んでいる自覚がにじみます。灌園は畑に水をやること、偃は横たわること、蓬廬は蓬で葺いた粗末な家です。選び取った簡素さには、強いられた貧しさとは違う誇りがあるのです。
この章句が説くこと
隠逸陶淵明清貧読書幽居
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