酔古堂剣掃 / 集素・荒涼の地に清曠の致有り
霜降木落時,入疏林深處,坐樹根上,飄飄葉點衣袖,而野鳥從梢飛來窺人。荒涼之地,殊有清曠之致。
新字:霜降木落時,入疏林深処,坐樹根上,飄飄葉点衣袖,而野鳥従梢飛来窺人。荒涼之地,殊有清曠之致。
書き下し
霜降り木落つる時、疏林の深き處に入り、樹根の上に坐せば、飄飄として葉衣袖に點じ、而して野鳥梢より飛び來りて人を窺ふ。 荒涼の地、殊に清曠の致有り。
現代語訳
霜が降り、木の葉が落ちるころ、まばらな林の奥に分け入って、木の根の上に腰を下ろすと、ひらひらと葉が衣の袖に舞い落ち、野の鳥が梢から飛んできてこちらをうかがいます。荒れてさびしい土地にこそ、とりわけ清らかで広々とした趣があります。
解説
晩秋の林に一人座る情景から、さびしさの中の美しさを見いだした一則です。前半は、霜、落葉、木の根、袖に落ちる葉、覗きに来る野鳥と、小さな出来事を順に重ねて描いています。後半の一句で、荒涼とした場所にこそ清曠の趣があると言い切ります。清曠は、清らかで、からりと開けた心持ちのことです。にぎやかな景色ばかりが美しいのではなく、人の少ない季節や場所に心が澄む瞬間がある、という見方です。休日に人の集まる名所を避け、冬枯れの公園を歩いてみると、思いがけない静けさに出会えるかもしれません。
この章句が説くこと
自然閑適秋静寂風雅
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