酔古堂剣掃 / 集素・蒲團に一たび臥す
竹影入簾,蕉陰蔭檻,故蒲團一臥,不知身在冰壺鮫室。
新字:竹影入簾,蕉陰蔭檻,故蒲団一臥,不知身在冰壺鮫室。
書き下し
竹影簾に入り、蕉陰檻を蔭ふ、故に蒲團に一たび臥せば、身の冰壺鮫室に在るかを知らず。
現代語訳
竹の影が簾の内に差し込み、芭蕉の葉陰が欄干を覆っています。ですから座布団にひとたび横になれば、自分が氷を入れた玉の壺の中か、人魚の住む水底の部屋にいるのではないかと思うほどです。
解説
夏の書斎の涼しさを、竹と芭蕉の影だけで描いた一則です。竹影と蕉陰が対になり、日差しをやわらげる二つの植物が並べられています。蒲團は蒲の葉で編んだ円い敷物で、座禅や昼寝に使うものです。冰壺は氷を入れた玉の壺で、清らかで涼しいものの喩えとしてよく使われます。鮫室は水中に住むという鮫人、すなわち人魚の部屋のことで、ひんやりした水底の住まいを思わせます。冷房がなくても、日陰と緑があれば心まで涼しくなるという感覚は、今の暮らしでも取り戻せるものかもしれません。
この章句が説くこと
閑適自然清涼竹夏
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