酔古堂剣掃 / 集素・花裏に空しく月を瞻て是れ卿なりとす
河邊共指星為客,花裏空瞻月是卿。
新字:河辺共指星為客,花裏空瞻月是卿。
書き下し
河邊に共に星を指して客と為し、花裏に空しく月を瞻て是れ卿なりとす。
現代語訳
川のほとりで一緒に星を指さして、あれは旅の客だと言い合いました。今は花の中でむなしく月を仰ぎ、あれがあなただと思うばかりです。
解説
共に過ごした日の思い出と、今の独りの寂しさを対比した七言二句の対句です。前半の河辺は、天の川のほとりとも川辺とも読めます。星を客と為すとは、一時だけ現れる客星になぞらえたとも、七夕の牽牛星のように年に一度訪れる客を思わせたとも読めます。後半の卿は親しい相手への呼びかけで、今は月を仰いで、あれがあなただと思うしかないという寂しさがにじみます。瞻は仰ぎ見ることです。集素の中では情の色が濃い句ですが、共に見た景色が、離れた後には相手を偲ぶよすがになるという、誰もが覚えのある心の動きを描いています。大切な人と共に見た景色を思い出させる一則です。
この章句が説くこと
恋情追憶星月風雅