酔古堂剣掃 / 集素・恬淡を葆守し時に瑤琴を撫す
挾懷樸素,不樂權榮;棲遲僻陋,忽略利名;葆守恬淡,希時安寧;晏然閒居,時撫瑤琴。
新字:挟懐樸素,不楽権栄;棲遅僻陋,忽略利名;葆守恬淡,希時安寧;晏然閒居,時撫瑤琴。
書き下し
懷に樸素を挾み、權榮を樂しまず。 僻陋に棲遲し、利名を忽略す。 恬淡を葆守し、時の安寧を希ふ。 晏然として閒居し、時に瑤琴を撫す。
現代語訳
胸には飾り気のない素朴さを抱いて、権勢や栄華を楽しみとしません。辺鄙で粗末な所にのんびりと住み、利益や名声を気にかけません。あっさりとして欲のない心を守り、世の安らかなことを願います。穏やかに閑かに暮らし、ときおり美しい琴を奏でます。
解説
四字句を重ねて、素朴で静かな隠居の生き方を歌うように述べた一則です。樸素は切り出したままの木と染めていない絹で、飾り気のない本来の姿を言います。権栄は権勢と栄華です。棲遅はのんびりと住まうことで、『詩経』陳風の衡門の詩に見える言葉です。僻陋は辺鄙でみすぼらしい所、忽略は気にかけないことです。恬淡はあっさりとして欲のないこと、葆守は大切に守ることです。晏然は安らかで落ち着いたさま、瑶琴は玉で飾った美しい琴です。四字ずつの落ち着いた調子そのものが、心の静けさを伝えています。声に出して読むと、慌ただしい気持ちが自然と鎮まっていくでしょう。
この章句が説くこと
恬淡素朴隠逸閑適清貧
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