酔古堂剣掃 / 集素・年光は跳丸よりも疾し
甜苦備嘗,好丟手,世味渾如嚼蠟;生死事大,急回頭,年光疾於跳丸。
新字:甜苦備嘗,好丟手,世味渾如嚼蝋;生死事大,急回頭,年光疾於跳丸。
書き下し
甜苦備さに嘗む、好し手を丟てよ、世味は渾て蠟を嚼むが如し。 生死は事大なり、急ぎ頭を回らせ、年光は跳丸よりも疾し。
現代語訳
甘いも苦いもひととおり味わい尽くしたのなら、さっさと手を放すのがよいのです。世の中の味わいは、まるで蝋を噛むように味気ないものです。生死は一大事です。急いで振り返りなさい。歳月は跳ねる玉よりも速く過ぎていきます。
解説
世俗への執着を断ち、生死という大事に向き直れと促す一則です。甜苦備嘗は甘さと苦さをひととおり経験すること、丟手は手を放すことです。嚼蝋は蝋を噛むことで、味がまったくないことのたとえです。生死事大は禅の言葉で、無常迅速と続き、修行を急ぐよう戒める句として禅寺の板にも書かれます。回頭は振り返ること、つまり迷いから本来の道へ立ち返ることです。跳丸は投げ上げては受け止める曲芸の玉で、あっという間に過ぎる時間のたとえです。人生の後半に差しかかったとき、何を手放し、何に向き合うかを考えさせる言葉です。
この章句が説くこと
無常禅生死執着時間
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