酔古堂剣掃 / 集素・俗塵を撲ち去ること三寸
余嘗淨一室,置一幾,陳幾種快意書,放一本舊法帖;古鼎焚香,素麈揮塵,意思小倦,暫休竹榻。餉時而起,則啜苦茗,信手寫漢書幾行,隨意觀古畫數幅。心目間,覺灑灑靈空,面上俗塵,當亦撲去三寸。
新字:余嘗浄一室,置一幾,陳幾種快意書,放一本旧法帖;古鼎焚香,素麈揮塵,意思小倦,暫休竹榻。餉時而起,則啜苦茗,信手写漢書幾行,随意観古画数幅。心目間,覚灑灑霊空,面上俗塵,当亦撲去三寸。
書き下し
余嘗て一室を淨め、一幾を置き、幾種の快意の書を陳べ、一本の舊法帖を放く。古鼎に香を焚き、素麈もて塵を揮ひ、意思小しく倦めば、暫く竹榻に休む。 餉時にして起き、則ち苦茗を啜り、手に信せて漢書幾行を寫し、意に隨ひて古畫數幅を觀る。 心目の間、灑灑として靈空なるを覺え、面上の俗塵、當に亦た撲ち去ること三寸なるべし。
現代語訳
わたしはかつて一部屋を掃き清め、机を一つ置き、心地よい書物を何種類か並べ、古い書の手本を一冊置きました。古い鼎で香を焚き、白い払子で塵を払い、少し気分が疲れると、しばらく竹の寝台で休みます。しばらくして起き上がると、苦い茶をすすり、手の赴くままに『漢書』を何行か書き写し、気の向くままに古い絵を何幅か眺めます。すると心にも目にもさっぱりとした清らかな空しさを感じ、顔に積もった俗世の塵も、三寸ほどは払い落とされたに違いありません。
解説
書斎で過ごす一日を細やかに描いた、集素の中でも長めの一則です。法帖は書道の手本、古鼎は古い青銅の香炉、素麈は白い払子のことです。餉時はしばらくの間という意味です。本を並べ、香を焚き、休み、茶を飲み、書き写し、絵を見るという流れに、少しも急いだところがありません。最後に顔の俗塵が三寸も落ちるという誇張で、心身が洗われた感覚をユーモラスに表しています。机の周りを片付け、好きな本と道具だけを置く空間を一つ持つだけでも、日々の疲れはずいぶん払われるものです。
この章句が説くこと
書斎読書閑適風雅清貧
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