酔古堂剣掃 / 集素・門外車馬の塵、了に相關せず
簷前綠蕉黃葵,老少葉,雞冠花,布滿階砌。移榻對之,或枕石高眠,或捉塵清話。門外車馬之塵滾滾,了不相關。
新字:簷前緑蕉黄葵,老少葉,鶏冠花,布満階砌。移榻対之,或枕石高眠,或捉塵清話。門外車馬之塵滾滾,了不相関。
書き下し
簷前の綠蕉黃葵、老少葉、雞冠花、階砌に布き滿つ。 榻を移して之に對し、或いは石を枕として高眠し、或いは塵を捉りて清話す。 門外車馬の塵滾滾たるも、了に相關せず。
現代語訳
軒先には緑の芭蕉や黄色の葵、葉鶏頭、鶏頭の花が、石段いっぱいに広がっています。寝台を移してそれに向かい、石を枕にしてゆったり眠ったり、払子を手に清らかな話をしたりします。門の外では車馬の立てる塵がもうもうと舞っていても、まったく関わりがありません。
解説
軒先の草花に囲まれた閑かな暮らしを描いた一則です。緑蕉は芭蕉、黄葵は黄色い花の葵の類、老少葉は葉鶏頭の類、鶏冠花は鶏頭で、いずれも夏から秋に色づく身近な草花です。階砌は石段のことです。捉塵は払子を手に執ることで、塵は麈の誤りと思われます。麈尾を持って清談するのは魏晋の名士の風です。高眠は世事を気にせずゆったり眠ることです。門の外の車馬の塵は、名利を求めて行き交う世間の喧騒をたとえます。それと全く関わらないと言い切るところに、この暮らしの清々しさがあります。喧騒から完全に離れられなくても、自分の周りに小さな静けさの場を作ることはできそうです。
この章句が説くこと
隠逸閑適草花清談静寂
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