酔古堂剣掃 / 集素・墨は日を見れば色灰す
茶見日而味奪,墨見日而色灰。
書き下し
茶は日を見れば味奪はれ、墨は日を見れば色灰す。
現代語訳
茶は日光に当たると味が損なわれ、墨は日光に当たると色が灰のようにくすみます。
解説
茶と墨という文人の二つの愛用品が、ともに日光を嫌うことを述べた一則です。奪は損なわれること、灰は色が灰色にくすむことです。茶葉は光と熱で香りや味が落ちやすく、墨も日に当てると膠が傷み、ひびが入ったり艶が失われたりするとされます。少し前に茶と墨の正反対の性質を並べた句がありましたが、ここでは両者に共通する弱点を示しています。大切なものは、しまい方ひとつで価値を失います。物に限らず、人の才能や信用も、むやみに人目にさらし続けると損なわれることがあります。表に出すものと、奥にしまって守るものを見分ける知恵にも通じる一則です。
この章句が説くこと
茶墨風雅保存文房
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集素・茶は新しきを欲し墨は陳きを欲す茶は白きを欲し、墨は黑きを欲す。 茶は重きを欲し、墨は輕きを欲す。 茶は新しきを欲し、墨は陳きを欲す。
-
『酔古堂剣掃』集素・茶は隱に類し酒は俠に類す熱湯沸くが如きは、茶は酒に勝たず。 幽韻云の如きは、酒は茶に勝たず。 茶は隱に類し、酒は俠に類す。 酒は固より道廣く、茶も亦た德素なり。
-
『酔古堂剣掃』集韻・人品と茶と相得べし茶中に料を著け、碗中に果を著くるは、譬へば玉貌に脂を加へ、蛾眉に黛を著くるが如く、翻つて本色を累はす。茶を煎ずるは漫浪に非ず、要ず須らく人品と茶と相得べし。故に其の法は往往にして高流隱逸の、煙霞泉石の磊落たる胸次有る者に傳はる。
-
『酔古堂剣掃』集韻・香は沖淡を雅と為す茶は色臭俱に佳なるを取るも、行家は偏へに味の苦きを嫌ふ。香は須らく沖淡を雅と為すべく、幽人は最も煙の濃きを忌む。
-
『酔古堂剣掃』集靈・好茶は用ひて以て煩を滌ふ好香は用ひて以て德を熏じ、好紙は用ひて以て世に垂れ、好筆は用ひて以て花を生じ、好墨は用ひて以て彩を煥かし、好茶は用ひて以て煩を滌ひ、好酒は用ひて以て憂ひを消す。
-
『酔古堂剣掃』集素・琴書を以て益友に代ふ茅屋三間、木榻一枕、高香を燒き、苦茗を啜り、數行の書を讀み、懶倦すれば便ち松梧の下に高臥し、或いは科頭にして行吟す。 日常苦茗を以て肉食に代へ、松石を以て珍奇に代へ、琴書を以て益友に代へ、著述を以て功業に代ふ、此れ亦た樂事なり。