酔古堂剣掃 / 集素・山居の城市に勝るは八德有り
山居勝於城市,蓋有八德:不責苛禮,不見生客,不混酒肉,不競田產,不聞炎涼,不鬧曲直,不微文逋,不談士籍。
新字:山居勝於城市,蓋有八徳:不責苛礼,不見生客,不混酒肉,不競田産,不聞炎涼,不鬧曲直,不微文逋,不談士籍。
書き下し
山居の城市に勝るは、蓋し八德有り。 苛禮を責めず、生客を見ず、酒肉を混へず、田產を競はず、炎涼を聞かず、曲直を鬧がず、文逋を微めず、士籍を談ぜず。
現代語訳
山の住まいが町の暮らしに勝るのは、思うに八つの徳があるからです。煩わしい礼儀を求められず、見知らぬ客に会わず、酒や肉の宴に交わらず、田畑や財産を争わず、世の人情の熱さ冷たさを耳にせず、是非曲直を言い争って騒がず、未納の税を催促されず、官吏の名簿や出世の話をしません。
解説
山居のよさを八か条にまとめた一則です。苛礼は細かすぎる礼儀、生客は面識のない客です。炎涼は、勢いのある人には熱く、落ち目の人には冷たい世の人情のことです。曲直は理非をめぐる言い争い、文逋は未納の税や公の負債で、微は徴の誤りと思われ、催促を受けないという意味に読みました。士籍は官吏の名簿で、出世や任官の噂話を言います。どれも、しないこと、聞かないことを並べていて、山居の幸せが、何かを得ることよりも、煩わしいものから離れることにあると分かります。今の暮らしでも、何を持つかより何から離れるかを考えると、心の平安への近道が見えてきます。
この章句が説くこと
隠逸山居清貧処世閑適
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