酔古堂剣掃 / 集素・足を洗ひ衣を收む
雲生滿谷,月照長空,洗足收衣,正是宴安時節。
新字:雲生満谷,月照長空,洗足収衣,正是宴安時節。
書き下し
雲生じて谷に滿ち、月は長空を照らす。 足を洗ひ衣を收む、正に是れ宴安の時節なり。
現代語訳
雲が湧いて谷いっぱいに満ち、月は果てしない空を照らしています。足を洗い、衣を片づける。まさにくつろいで安らぐ時です。
解説
一日の終わりの安らぎを簡潔に描いた一則です。谷に満ちる雲と空を照らす月という大きな景色から、足を洗い衣をしまうという身近な動作へと視線が移っていきます。洗足は野良仕事や外出から帰って足を洗うこと、収衣は脱いだ衣服を片づけることです。宴安はくつろいで安らぐことです。雄大な自然と、ささやかな身の回りの動作とが、何の無理もなく一つの情景に収まっているところに、この句の味わいがあります。一日の労働を終えた後の満足が静かに伝わってきます。仕事から帰ったあとの小さな習慣を丁寧にすることが、一日を気持ちよく締めくくる秘訣かもしれません。
この章句が説くこと
閑適自然休息素朴日常
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集綺・野花目に艷なり野花目に艷なり、必ずしも牡丹ならず。 村酒人を醉はしむ、何ぞ綠蟻を須ゐん。
-
『呻吟語』内篇・養生・太樸は天地の命脈太樸は、天地の命脈なり。太樸散じて天地の壽妖卜す可し。故に萬物蕃れば、則ち造化の元精耗散す。木の實多き者は根傷み、草の莖出づる者は根虛し、費用廣き者は家貧しく、言行多き者は神竭く。皆な妖道なり。老子の受用の處は、盡く此の中に看破す。
-
『酔古堂剣掃』集醒・童子は智少なくして愈〻完し童子は智少なし、愈〻少なくして愈〻完し。成人は智多し、愈〻多くして愈〻散ず。
-
『呻吟語』内篇・應務・無用の樸は君子貴ばず無用の樸は、君子貴ばず。機械變詐を事とせずと雖も、德慧術知に至りては、亦た無かる可からず。
-
論語・先進篇子曰く、先進の礼楽に於けるは、野人なり。後進の礼楽に於けるは、君子なり。如し之を用いば、則ち吾は先進に従わん。
-
論語・八佾篇子夏問いて曰く、「巧笑倩たり、美目盼たり、素以て絢を為すとは、何の謂ぞや」と。子曰く、「絵事は素より後にす」と。曰く、「礼は後か」と。子曰く、「予を起こす者は商なり。始めて与に詩を言うべきのみ」と。