酔古堂剣掃 / 集素・秀色紛紛として盤に墮つ
終南當戶,雞峰如碧筍左簇,退食時秀色紛紛墮盤,山泉繞窗入廚,孤枕夢回,驚聞雨聲也。
新字:終南当戸,鶏峰如碧筍左簇,退食時秀色紛紛堕盤,山泉繞窗入廚,孤枕夢回,驚聞雨声也。
書き下し
終南戶に當たり、雞峰は碧筍の如く左に簇がる。 退食の時、秀色紛紛として盤に墮ち、山泉窗を繞りて廚に入る。 孤枕夢回りて、驚きて雨聲を聞くなり。
現代語訳
終南山が戸口の正面にそびえ、雞峰が青い筍のように左手に群がって立っています。食事を終えて退くころには、山の美しい色が次々と皿の上にこぼれ落ちるかのようで、山の泉は窓を巡って台所に流れ込みます。一人寝の枕で夢から覚めると、雨の音が聞こえてはっと驚きます。
解説
山の住まいの風情を、目と耳の両方から描いた一則です。終南は長安の南にそびえる終南山で、古くから隠者の住む山として知られます。雞峰はその近くの峰の名と思われます。碧筍は青い竹の子で、とがった峰の形をたとえています。退食は食事を終えて退くことです。山の色が皿に落ちるという表現は、窓から見える山の緑が食卓に映る様子を言った、美しい誇張です。夜中に目覚めて雨音にはっとするのも、泉の音に囲まれた山住まいならではの体験でしょう。住まいの窓から何が見え、何が聞こえるかが、暮らしの豊かさを大きく左右することを教えてくれます。
この章句が説くこと
隠逸山水住まい自然閑適
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