酔古堂剣掃 / 集素・一の戀の字を擺脫す
胸中只擺脫一戀字,便十分爽淨,十分自在;人生最苦處,只是此心;沾泥帶水,明是知得,不能割斷耳。
新字:胸中只擺脱一恋字,便十分爽浄,十分自在;人生最苦処,只是此心;沾泥帯水,明是知得,不能割断耳。
書き下し
胸中只だ一の戀の字を擺脫すれば、便ち十分に爽淨、十分に自在なり。 人生最も苦しむ處は、只だ是れ此の心なり。泥に沾ひ水を帶び、明らかに是れ知り得るも、割斷する能はざるのみ。
現代語訳
胸の中から、ただ「恋」という一字、つまり執着を振り払いさえすれば、すっかり爽やかで清らかになり、すっかり自由になれます。人生で最も苦しいところは、ただこの心にあります。泥にまみれ水を引きずるように、はっきりとわかっているのに、断ち切ることができないだけなのです。
解説
執着を断つことの難しさを率直に語った一則です。ここでの恋は恋愛に限らず、物事に心が引かれて離れられない執着全般を指します。擺脱は振り払うこと、爽浄はさっぱりと清らかなことです。沾泥帯水は、泥や水が体にまとわりつくように、未練を引きずるさまを言います。頭ではわかっているのに断ち切れないという告白は、多くの人の実感に近いでしょう。過去の成功や地位、人間関係にこだわって前に進めないとき、自分が何に恋々としているかを言葉にしてみることが、手放す第一歩になるはずです。
この章句が説くこと
執着修身心境自在克己
関連する章句
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『呻吟語』内篇・存心・只だ一の戀の字を擺脫せよ胸中に只だ一の「戀」の字を擺脫すれば、便ち十分爽淨、十分自在なり。人生の最も苦しむ處は、只だ是れ此の心泥に沾れ水を帶び、明らかに是れ知り得たるも、斷割する能はざるのみ。
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『酔古堂剣掃』集醒・病根は一の戀の字に在り泥に沾ひ水を帶ぶるの累は、病根一の戀の字に在り。方に隨ひ圓を逐ふの妙は、便宜一の耐の字に在り。
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『酔古堂剣掃』集醒・一の戀の字を帶ぶ貧賤の人は、一も有る所無し、命終に臨む時に及びて、一の厭の字を脫す。富貴の人は、有らざる所無し、命終に臨む時に及びて、一の戀の字を帶ぶ。一の厭の字を脫すれば、重負を釋くが如し。一の戀の字を帶ぶれば、枷鎖を擔ふが如し。
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『酔古堂剣掃』集素・煩惱何處に從りてか身を安んぜん塵緣割斷すれば、煩惱何處に從りてか身を安んぜん。 世慮潛かに消ゆれば、清虛此の中に向かひて腳を立つ。
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『酔古堂剣掃』集醒・塵緣割斷すれば煩惱何處に安身せん塵緣割斷すれば、煩惱何れの處よりか身を安んぜん。 世慮潛かに消ゆれば、清虛此の中に向ひて腳を立つ。
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『酔古堂剣掃』集法・今日の是は執るべからず昨日の非は留むべからず、之を留むれば則ち根燼復た萌して、塵情終に理趣を累はす。今日の是は執るべからず、之を執れば則ち渣滓未だ化せずして、理趣反って轉じて欲根と為る。