酔古堂剣掃 / 集素・禪林道院に生機を添ふ
客寓多風雨之懷,獨禪林道院,轉添幾種生機;染翰揮毫,翻經問偈,肯教眼底逐風塵。
新字:客寓多風雨之懐,独禅林道院,転添幾種生機;染翰揮毫,翻経問偈,肯教眼底逐風塵。
書き下し
客寓は風雨の懷多し、獨り禪林道院のみ、轉た幾種の生機を添ふ。 翰を染め毫を揮ひ、經を翻し偈を問ふ、肯へて眼底をして風塵を逐はしめんや。
現代語訳
旅先の仮住まいでは、風雨にさらされるような心細い思いが多いものです。ただ禅寺や道観だけは、かえっていくつもの生き生きとした気を添えてくれます。筆を墨に浸して書をしたため、経をめくり偈を問うていれば、どうして目の前の俗世の塵を追いかけたりするでしょうか。
解説
旅の心細さを、寺や道観で過ごす時間が癒やすことを述べた一則です。前の則の家居に対して、こちらは客寓、つまり旅先の仮住まいを取り上げ、二つで一対になっています。禅林は禅寺、道院は道教の寺院です。生機は生き生きとした気、染翰揮毫は筆を墨に浸して字を書くこと、偈は仏の教えを説いた詩です。風塵は俗世のあわただしさを指します。出張や転勤で落ち着かないとき、静かな場所で書き物や読書をすると、気持ちが立ち直ることがあります。旅先で寺社を訪ねる習慣も、その一つでしょう。
この章句が説くこと
閑適禅旅風雅心境
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