酔古堂剣掃 / 集素・胸中に冰炭を生ずるを許さず
家居苦事物之擾,惟田舍園亭,別是一番活計;焚香煮茗,把酒吟詩,不許胸中生冰炭。
新字:家居苦事物之擾,惟田舎園亭,別是一番活計;焚香煮茗,把酒吟詩,不許胸中生冰炭。
書き下し
家居は事物の擾に苦しむ、惟だ田舍園亭のみ、別に是れ一番の活計なり。 香を焚き茗を煮、酒を把り詩を吟じ、胸中に冰炭を生ずるを許さず。
現代語訳
家にいると、あれこれの用事にわずらわされて苦しみます。ただ田舎の家や庭の東屋だけは、まったく別の暮らし方ができます。香を焚いて茶を煮て、酒を手に詩を吟じ、胸の中に氷と炭がぶつかり合うような葛藤を起こさせません。
解説
家の雑事から離れた田舎の庭で、心を穏やかに保つ楽しみを述べた一則で、次の則と対になっています。活計は暮らし方、生き方のことです。冰炭は氷と炭で、互いに相容れないものの喩えです。胸中に冰炭を生ずとは、心の中で相反する思いがせめぎ合い、落ち着かない状態を言います。香、茶、酒、詩という四つの楽しみを並べて、心にわだかまりを残さない工夫を示しています。家庭や職場の用事に追われるとき、少しの間でも場所を変え、好きなことに没頭する時間を持つと、心の中の対立がほどけていくものです。
この章句が説くこと
閑適風雅茶心境田園
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